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【特別対談最終回】柏木陽介氏「岐阜の人たちに見せたい景色がある」引退試合への思い、高萩氏ら仲間集結

[ 2025年12月20日 17:45 ]

岐阜時代の柏木陽介氏(21年撮影)
Photo By スポニチ

 柏木陽介引退試合が21日、岐阜メモリアルセンター長良川競技場で開催される。その試合に先立ち、柏木陽介さん(38)と広島で共にプレーした盟友である高萩洋次郎さん(39)に話を聞いた。柏木さんは23年に現役を引退し、現在は岐阜のクラブアンバサダーと並行して様々な活動に取り組んでいる。今回は「仲間に感謝、岐阜から未来を」テーマに、現役生活最後の舞台として戦った岐阜への感謝の思いを込めて真剣勝負に挑むという。また、高萩さんは今年1月に引退後、第二の人生として選んだプロスポーツチームのデジタルトレーディングカードなどのサービスを提供する株式会社VOLZ(ヴォルツ)の社員としてもこの一戦に協力する。引退試合の記念グッズが当選するくじの販売や、協賛企業の招待者チケットのオンライン配布などで後輩の晴れ舞台を盛り上げる。【全6回の最終回】

 柏木氏には自身のサッカー人生において、「自分が一番変えられるなら変えたい部分でした」と振り返る時期が存在する。それが浦和から岐阜への移籍を決断するまでの約1年半だという。

 「本当にサッカーに対する姿勢もダメで、全て人のせいにしてしまっていた。自暴自棄というか、現実逃避するようにベクトルを外に向けていた。退団になる前の年から練習中にサブ組に入って紅白戦に勝って喜ぶような態度を取ってしまっていた。ほんまに人として一番ダメな時期でした」

 そうした行動を取ってしまったのは、「レッズで引退したいし、レッズが好きすぎて自分の視野が狭くなっていた」と顔を伏せる。

 「こんなに思っているオレがプレーも全然悪くないのに、何で試合に出られないんだって。いろんなことが積み重なって、チームとしても扱いづらくなって当たり前だったと思う」

 そして、コロナ禍の21年2月のキャンプ中における無断外出による規律違反が重なった。困っている人を助けたいと取った行動だったが、それが愛するクラブを退団する引き金となった。当時の柏木は髪が抜け落ち「500円ハゲができるほど悩んだ」。キャリアのどん底にいた、彼を救ったのも人だった。同年3月に浦和からJ3岐阜への移籍が決定する。

 「今の小松(裕志)社長がJ3でも良ければFC岐阜に来てくれないかとすぐに連絡をいただいた。もう心が震えました。でも、すぐに返答したわけではなく、その時は『まず自分の過去を振り返って考える時間をください』とだけ伝えました。そうなったときに、自分はこれまでどういう風に生きてきたかなって改めて考えました。人を大事にして、思いがある人と仕事をしてきたから成長できたと、思い返すことができた時間でした」

 キャリアの終着地に選んだ岐阜でスパイクを脱いだ。ゼロからの再出発だったが、自らの経験を伝えた3年間だった。

 「岐阜に行けたからまた自分は変われたと思っています。ただ、J3でもっとできると思ったけど、伝えることも難しかったし、いいプレーを見せ続けるのも難しかった。後悔ではないけど、その申し訳なさみたいなものはいまだに残っています」

 だからこそ、柏木氏は「岐阜の人たちに見せたい景色がある」と言い、自身最後の真剣勝負の場として岐阜を選んだ。

 「岐阜のホームゲームで平均観客は4000人台だけど、岐阜のスタジアムが満員になる姿を見せることで、将来FC岐阜はこういう姿になっていったらいいねというところを見せられるかなという思いでいます。これだけの選手が一同に集まってくれる機会はなかなかないことだと思うので、それを心から楽しんでもらいたい。自分が最後を飾るあいさつをしたいという思いではなくて、みんなにありがとうと伝えたいだけなので」

 その心意気に賛同した仲間の一人が、プロ入り前から柏木氏を知る高萩氏だった。引退後に自身が就職した会社に掛け合い、オンラインくじなどでの協力を提案して実現にこぎ着けた。

 「サポートという感覚ではなくて、陽介には思いがあるから何かお手伝いしたかった。ボランティアでもいいから何か手伝いたかったのが本音でした。その思いが会社に伝わって、会社もやろうと言ってくれたので感謝しています。陽介には何かを還元したいという思いで、引退記念グッズのオンラインくじを活用することになった。サッカー選手には退職金がないから引退した後にその収益の一部を今後の活動に生かしてもらいたいというところが今回の話の出発点でした」(高萩氏)

 人を大切にしてきたサッカー選手・柏木陽介の最後の打ち上げ花火にそうやって多くの仲間が協力を惜しまなかった。柏木氏は「泣きますよ。そのぐらいうれしいです」と言いながら、照れ笑いを浮かべた。21日の引退試合を最後に、本格的なセカンドキャリアを歩み始める。柏木氏はその展望をらしい言葉でこう語った。

 「子どもたちと触れ合うことが多分1番得意で、好きなことで、仕事をしているのに逆にパワーをもらっているので、一番向いているとは思っています。今後はそうやって自分の手の届く範囲で自分に合ったことを見つけていきたい。常に自分はプレーヤーでいたいし、自由に気ままにやっていくことが自分にはきっと合っていると思います。ただ、あとは自分が楽しむのもそうだけど、自分が大好きな人たちや家族がハッピーでいられることが、僕にとっての幸せだと思っています。だから、今後も僕が好きな人たちをつなげていくことは続けていきたいと思います」

 縁もゆかりもなかった場所が気に入った柏木氏は家を建て、引退した現在も岐阜を活動の拠点としている。仲間と共に、岐阜の未来を照らす。現役時代に“太陽”と評された男のそんな最後の一日が始まる。

◇柏木陽介引退試合の記念グッズが当選する抽選くじのサイトが19日18時からオープン(https://kujipl.tixplus.jp/lottery/yosukekashiwagi_202512_kuji?utm_source=newspaper)

 試合当日には、高萩氏がオンラインくじへと飛べる柏木氏の写真が入ったリアルカードを配布する。高萩氏は「試合当日に、僕の会社がつくったオンラインくじを訴求するための陽介のカードを配布します。表面には陽介の写真が入っていて、裏面にはQRコードになっていてくじに飛べるようになっています。くじの中には引退試合当日の写真素材をいただいて、カードになるので楽しみにしていてください。あとは陽介が引退試合で着用したスパイクやユニホームなどもそろっています。カードを配るところには僕もいるので、皆さんぜひお越しください」と呼びかけた。

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