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川崎F 華麗なる2発の小林悠が“復活”できた背景 中村憲剛氏がくれた「絶妙なタイミング」の電話

[ 2022年4月25日 19:30 ]

<川崎F・ジョホールDT>前半、川崎Fの2点目のゴールを決め谷口(左端)、家長(右端)らに祝福される小林(左から2人目)
Photo By ゲッティ=共同

 ACL東地区1次リーグI組の川崎Fは24日、ジョホールDT(マレーシア)に5―0で大勝した。MF脇坂泰斗(26)が華麗なFK弾で前半14分に先制し、勝利を決定づけたのはFW小林悠(34)。前半のうちに今大会2度目のマルチ得点を挙げ、首位浮上に導いた。試合から一夜明けた25日、小林はオンライン取材に対応。元日本代表MF中村憲剛氏(41)の助言が、“復活”の背景にあったことを明かした。

 JリーグMVPや得点王に輝いたFWも今や34歳。今季は最も出場を望むセンターFWをレアンドロ・ダミアン(32)や知念慶(27)に譲り、サイドに回っても出場が少ない時間が続いていた。本来は「不満をパワーに変えられるタイプ」。怒りやイライラをゴールへの執着心に変えてFWとして生きてきたはずが、今季はそれを自身の中で抑え込んでいた。「いい意味で大人にならなきゃいけないのに、悪い意味で大人になっていた」。ベテランという立場が、周りへの気遣いを優先させていた。

 「なかなか試合に出られていない。試合に出てもサイドでの出場。自分の中でも苦しい時間がずっと続いていて、苦しいから練習でアピールしないといけないんですけど、試合に出ないからなかなかコンディションも上がらなくて。ほんとに悪循環というか」。どうしたらいいのか分からない苦しさを見抜いたかのように電話をくれたのが、中村憲剛氏だった。

 「絶妙なタイミングで電話をくれた。そのときは長電話になっちゃったんですけど、本当に何ていうんですかね…。なんならちょっと、泣きそうになっちゃったくらい。本当に辛い中でのいいタイミングすぎる電話だったので。この人、引退しても気遣いの人なんだなというか、自分のことを本当に理解してくれている人なんだなというのは再確認しました」。J1広島戦(3月19日)前頃のタイミングだった。

 40歳まで現役を続けた中村氏は、自身の立場に寄り添ってくれた。「ベテランになって上がいなくなって、なかなか不満だったりストレスを相談できる人が自分もいなかった。つらいよな」。その上で、背中を押してくれた。「でもやっぱり歳をとることを受け入れちゃダメだよ。ベテランだからこそあらがっていかないと。試合に出るというのは簡単じゃないから。もっとギラギラして、ピッチに入っただけで“なんかやってくれるぞ”という目つきとかが悠のいいところだから」

 それまでは自身のゴールよりもまずチームのことを考えていたという小林は、「それは確かに前半戦で自分の中になかった」と自覚。「チームがどう勝つかということにフォーカスしすぎていたので、昨日(ジョホールDT戦)みたいに正直、チームのことよりも自分のゴールにフォーカスできるようになったのは、(中村)憲剛さんの助言のおかげ」。気持ちが整理され、好循環が生まれるようになった先輩の優しさに感謝した。

 これで今大会はチーム最多の4得点。初のアジア制覇を狙うクラブを、1次リーグ突破に大きく前進させた。自身の1点目のゴールの際に痛めた右膝は「あまり曲がらない」としながらも「大丈夫です」と問題がない様子を見せた。次節は15日の初戦でも1―1で引き分けた、積年のライバル・蔚山(韓国)戦。「今ならゴールを決められる自信が凄くある。できるだけ長く出してほしい」。若手のように情熱をほとばらせ、大一番を見据えた。

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