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田舎でも勝てます!移動は貸しバス、初昇格パーダーボルンが快進撃

[ 2014年11月4日 09:00 ]

<パーダーボルン・ヘルタ>勝利を喜ぶパーダーボルンのイレブン

ブンデスリーガ パーダーボルン3―1ヘルタ

(11月2日)
 創設30年目で初の1部昇格を果たしたパーダーボルンが大健闘を見せている。2日のホーム・ヘルタ戦に3―1で勝ち、勝ち点を15に伸ばして前節の9位から7位に浮上。日本人選手所属クラブ相手には5戦無敗で、欧州カップ戦出場圏内の6位が目前だ。選手の総年俸がバイエルン・ミュンヘンの10分の1以下で、開幕前は降格確実と予想されていた1部最小規模のチームは「弱くても勝てます」を見事に体現している。
【ブンデスリーガ動画 順位表】

 かつてカール大帝の宮廷があり、「神聖ローマ帝国誕生の地」とも呼ばれるドイツ中西部の宗教都市パーダーボルン。バレーボールが盛んで、静岡県藤枝市とほぼ同じ人口14万3659人の田舎町は、昨年からサッカーで有名となった。3部を主戦場とし、2部にいた昨季も降格候補に挙げられたSCパーダーボルンが2位に入り、予想外の1部昇格。初挑戦の1部でも第4節まで無敗を保ち、一時は首位に立った。

 当初は貧窮ぶりが話題を集めた。節約のため移動は飛行機ではなくバス(しかもレンタル)、練習用具はガレージの中、着替え場所は体育館。昨季の選手総年俸は620万ユーロ(約8億7400万円)で、今季は1500万ユーロ(約21億円)に上がったとはいえ1部で群を抜いて最下位だ。リーグ最高年俸のリベリとゲッツェ(ともにバイエルンM)が1200万ユーロ(約17億円)だから、その安さが分かる。

 もちろん大物選手はいない。だが、過去にルフカイ監督(現ヘルタ)やシュミット監督(現レバークーゼン)を起用したボルンGMは契約満了となったり、くすぶっている選手に目をつけて獲得してきた。昨季は4年前にカジノ強盗をはたらいて服役したMFコチュを迎え入れ、今季は2部1860ミュンヘンで大迫の同僚だったMFシュトッペルカンプが格安の70万ユーロ(約9870万円)で加入。この日勝ち越しゴールを決めたFWカチュンガはヘルタ時代、ルフカイ監督にアマチームへ降格させられた選手で「俺にとって特別な相手だった」と感激した。

 率いるのは41歳のブライテンライター監督。現役時代はFWで、弱小クラブのウンターハヒンク(現3部)で1部の強豪に立ち向かった経験があり、4年前に子供が所属するチームに頼まれて指導を始めた変わり種だ。昨季就任したパーダーボルンではポゼッションサッカーを貫き、後半戦17試合12勝の快進撃。今季はカウンター主体だが鍛えられたパスワークは正確で、10試合とも支配率で劣りながら6試合でシュート数が相手を上回る効果的な攻めが特徴だ。「得点と勝ち点を見れば我々の取り組みが正しいことが分かる」。選手を乗せるのが巧みな指揮官の下、奇跡の昇格と言われたチームの目標は、1部残留から上位進出へと変わりつつある。

 ▽SCパーダーボルン07 前身は1907年創設のSV07ノイハウス。08年誕生のFCプロイセン・パーダーボルンと85年に合併して誕生し、97年に現チーム名に改称。94年に3部レギオナルリーガへ初昇格。2005年にブンデスリーガ2部初昇格。08年に3部降格後、09年に再昇格して13~14年シーズン2位で1部初昇格。

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2014年11月4日のニュース