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W杯会場建設遅れ招く ブラジルのお役所仕事と物言う労働者、そして金

[ 2014年2月18日 08:15 ]

1月に大幅な遅れを見せるクリチバを現地視察したFIFAのバルク事務局長

 W杯ブラジル大会で6月12日の開幕までにスタジアムが完成しない危険性が高まってきた。全12会場のうち予定通り完成したのはわずか2会場。昨年12月に完成予定だった6会場のうち5会場が未完成で、建設が最も遅れているバイシャダ競技場(クリチバ)についてはFIFAが大会からの除外を検討している。建設費が高騰する問題も噴出。なぜここまで完成が遅れたのか、現地在住の大野美夏通信員が解説する。

 W杯ブラジル大会の準備で18日は一つの節目となりそうだ。1月に現地を視察したFIFAのバルク事務局長が「非常事態」と表現したバイシャダ競技場について、FIFAは18日までに予定通り開催するか、大会から除外するかを最終判断する。レベロ・スポーツ相は「1月から建設のスピードを大幅に上げた。楽観視している。18日には開催が確定する」と話しているが、14日付のブラジル紙エスタド・ジ・サンパウロは「完成率はまだ90%」と伝えるなど予断を許さない状況だ。

 開幕まで4カ月を切った中でバイシャダを含めて5会場が未完成。FIFAのブラッター会長が「これほど準備が遅れた国はかつてなかった」と言うほどの事態はなぜ起こったのか。大野通信員は3つの理由を挙げる。

 (1)お役所仕事 「ブラジルは税金、許可の手続きなど“お役所仕事”がやっかいな国。日本企業が進出する時も、事業開始まで予想以上に時間がかかると言われる」

 07年にW杯開催が決まりながら煩雑な手続きによって工事の開始自体が遅れたことが始まりだ。

 (2)労働者の権利主張 「ブラジルは労働者の権利が強く、無理な突貫工事はできない。サービス残業は一切不可。基本的にパート雇用はなく正社員。工事のスピードを早めるためには労働者を増やさないといけない」

 賃上げや待遇改善を求めて各会場でストライキが繰り返されたことも工期の遅れにつながった。

 (3)資金難 (2)に関連する人件費の高騰、インフレによる資材の値上がりなどで当初予算はすぐにオーバー。新たな資金供給の許可を得るためにはまた(1)で手続きや審査に時間がかかり、工事が遅れる悪循環に陥った。「建設関連企業と許可を出す政治家や役人が共謀して互いの私腹を肥やすためにわざと工事を遅らせることもあると言われている」と大野通信員。昨年4月の時点で建設費が当初予定の約3倍となる37億ドル(約3750億円)を計上したと報じられ、すでに06年ドイツ大会と10年南アフリカ大会を大幅に上回っている。

 その後も工期を早めるために追加予算を計上。昨年にはW杯よりも福祉充実などを訴えて大規模デモが発生した。さらに税金が投入される事態となれば、サッカー王国といえども国民の不満が高まることは確実。混乱が深まる可能性もある。

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2014年2月18日のニュース