【追憶のダービー】04年キングカメハメハ アンカツついに頂点「未勝利戦のように乗って」悲願かなえた

[ 2024年5月22日 06:45 ]

第71回日本ダービー、キングカメハメハでダービーを制しガッツポーズを見せる鞍上の安藤勝己騎手(2004年5月)
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 04年5月30日、第71回ダービー。直線を向くと、キングカメハメハはあっという間に外から先頭に立った。「ああ、アンカツさん、自分の競馬ができている。これは勝ったかもしれない」。スタンドでレースを見ながら、そう確信できた。

 頭をよぎったのはキングカメハメハが前走・NHKマイルCを5馬身差つけて快勝し、3日が経過した水曜日の栗東トレセンでの安藤勝己騎手とのやりとりだった。日が高く昇り、控室にはアンカツさんだけが残っていた。チャンスだと直感し、余計な言葉を抜きにして、こう直撃した。

 「アンカツさん、キングカメハメハならダービーも勝ちますね」。安藤は最高の笑顔を返して、こう言った。「ああ、勝てるね。キングカメハメハなら勝てる」。あまりに力強い言葉に、こちらが戸惑った。騎手の夢であるダービーを前に、ここまで自信を隠さなかった関係者を自分は知らなかった。

 「ただ、ね」。アンカツは続けた。「俺が普段通りに乗れれば、という条件がつく。ダービーでも、まるで未勝利戦のように乗れるか。そこに懸かっている」

 気温32度。灼熱の中でのダービーとなった。マイネルマクロスが飛ばして1000メートル通過は57秒6。大一番は消耗戦の様相を呈していた。こういう展開は真っ向勝負がふさわしい。小細工せずねじ伏せる。それがアンカツ流だ。だからこそ、直線を向いて早々と先頭に立った。

 ハイアーゲームが迫る。だが残り150メートルであごが上がった。ハーツクライが飛んできた。だが、時すでに遅し。アンカツの右手が上がるのと同時にキングカメハメハはゴール板を駆け抜けていた。

 「勝って当然と思っていたからね。厳しい流れだから必死で追ったよ」。安藤には珍しく、顔がほてっていた。

 記者の前では常に笑顔のアンカツだが、実は懸命に緊張と戦っていた。自宅で、ゆかり夫人が「ダービー、勝てるといいね」と話しかけた。いつもなら笑みを返してくるはずが「あまり言われると硬くなるから、やめておけ」と声を硬くした。

 夫人はダービーについて話すことをやめ、主人に黙ってゲンかつぎをした。左手薬指には「カメハメハ」を意識して亀が装飾された指輪をつけ、左手中指の爪には「キング」よろしく王冠のネイルを施した。家族は無言で後押しした。

 祭りは終わった。記者があらかた引き揚げた後、そっとアンカツに聞いた。「未勝利戦のように乗れました?」「乗れたよ。ダービーであっても、1番人気であっても、平常心で乗れた。自分でも驚いた」。当時44歳。「勝己」という名前を地で行くように、己に勝って、安藤は地方競馬出身の騎手として初めてダービージョッキーとなった。

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