追い切りでエルコンドルパサーの歩様を戻した“名手”蛯名正義

[ 2021年2月26日 05:30 ]

美浦トレセンの蛯名(撮影・西川祐介)
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 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末を最後に多くの調教師と騎手が引退する。定年を迎える石坂正師や西浦勝一師、松田国英師らも残念だが、勇退する角居勝彦師も競馬界にとっては大きな損失と言えよう。

 そして、何といってもジョッキーでは蛯名正義騎手。調教師という新たな立場でこの世界に身を残すとはいえ、ジョッキーとしての活躍はこれが最後になるのは何とももったいない気がしてならない。

 26のG1勝ちを含むJRA通算2539勝(25日現在)の名手には数字上、これに含まれていない実績も多々ある。その一つがエルコンドルパサーとのコンビで挙げた仏国でのG1サンクルー大賞典勝ち(99年)。同馬とのコンビでは秋に凱旋門賞(G1)でも2着に善戦。異国でもほぼ完璧な成績を残したが、約半年に及ぶ遠征は決して常に順調ではなかった。

 当時、一緒に現地に滞在していた佐々木幸二調教助手は凱旋門賞を目前に控えた段階で苦悩していた。「前哨戦の前あたりから歩様がいまひとつで本来の状態が戻ってきませんでした」。大目標の目の前まで来て、回避しなくてはいけないか?と思える状態。管理していた二ノ宮敬宇師(引退)に相談すべきか?と悩んでいると逆に指揮官から言われた。「歩様が悪いけど大丈夫か?」。二ノ宮師の目はごまかせなかった。

 全ては最終追い切り次第という形で追い切りをつける蛯名騎手にバトンを渡した。すると…。

 「蛯名さんが乗った最終追い切りを境に良い頃の歩様が戻りました」(同助手)

 ここからレース当日まで、状態はグングンと良化の一途をたどったという。それでもレースではモンジューの2着に敗れてしまうのだが、果敢に逃げて3着以下を完封した走りは当時、現地で「今年の凱旋門賞には勝ち馬が2頭いた」と言わしめる好走劇だった。

 そんな名手の手綱さばきを見られるのも今週が最後と思うと寂しい限り。まずは最後まで無事に乗る姿を目に焼き付けさせてもらおう。 (フリーライター)

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