【ジャパンC】杉山晴師、メアドに刻んだスリーロールス G1を勝つ喜び知った

[ 2020年11月25日 05:30 ]

東西の巨匠に挑む若き調教師――。 「杉山晴紀 Story」(2)

スリーロールスの頭をなでる当時調教助手だった杉山晴師
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 高校卒業後は石川県の小松温泉牧場(現小松トレーニングセンター)で働きました。入って1年半は乗馬練習ばかり。なかなか競走馬に乗せてもらえませんでした。高校の県大会で優勝していたし、(自分は)乗れるのに…って少してんぐになっていた部分がありましたね。でも、人間的な部分を教育してもらえました。そういう面では大事な時期でした。

 競走馬は調教も大事ですが飼養管理やカイバも大事。そういうことがあって、初めていい馬ができると分かっていたけど、当時は馬乗りしか頭になかった。視野が広がりましたし競走馬のイロハを学びました。タイミングとしては大学に行く期間と同じ。丸4年いて、22歳の3月に競馬学校に入りました。

 卒業後は武宏平厩舎に所属。先生には本当に感謝しかないです。この厩舎でなかったら調教師試験も受けていなかった。一番若い僕にいろいろなことを任せてくれました。調教メニュー、馬の入れ替え、ジョッキーの選択もやらせてもらいました。どうすれば結果が出るかを考えることが好きだったんでしょう。その楽しみを知ってしまった。その中からスリーロールスが出て、G1を勝つ楽しみ、喜びを教えてもらいました。

 調教に携わったスリーロールスは09年菊花賞を勝ちました。違うなと思ったのは追い切りをやっても息ひとつ乱さないこと。びっしりやってもケロッとしている。今でも印象的です。心肺機能にいいものがあったのでしょう。菊花賞は勝つかどうかまでは分からなかったけど、ハマったらいいなというのはありました。

 続く有馬記念のレース中に故障。とてもショックでした。満足いく状態ではいけましたが…。あの後、自分のメールアドレスを変えました。ロールスの名前と有馬記念の日付を入れて…。勝った菊花賞ではありません。有馬記念。人間、いいことはいつまでも覚えているけど悪いことはすぐに忘れてしまう。メールアドレスならすぐ目に入りますから。あの時のことを忘れないように…といつも思っています。

 ◆杉山 晴紀(すぎやま・はるき)1981年(昭56)12月24日生まれ、神奈川県出身の38歳。16年調教師試験合格、同年10月開業。18年目黒記念(ウインテンダネス)でJRA重賞初制覇。同年秋のJBCクラシック(ケイティブレイブ)でG1初制覇。今年、デアリングタクトで牝馬3冠を制し、牝馬3冠最年少トレーナーとなった。今年は36勝を挙げ、リーディングトップ10をキープ。JRA通算1224戦106勝。

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2020年11月25日のニュース