ホースマンの父、亡き母と…ルーキー小林脩斗 次なる1勝へ「努力し続けて少しずつ進歩を」

[ 2020年7月29日 05:30 ]

期待の若手騎手に聞く

今月3月にデビューした小林脩斗騎手(撮影・西川祐介)
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 今年3月1日にデビューした小林脩斗。同21日の中山2R、通算20戦目で初勝利を挙げた。だが、翌週の中山。積雪で延期となった“火曜競馬”の4Rで落馬。自らの不注意で前の馬に接触したとして、過怠金5万円も科された。「先輩騎手との技術の差を思い知らされた。競馬の流れの中での動き、前後との距離の把握など。ほんの少しの判断ミスが、他の人や馬に大きな迷惑を掛けてしまうことを痛感しました」

 謙虚に振り返るが、自身にとっても痛い落馬だった。頭部と頸椎(けいつい)を負傷し、約1カ月間の戦線離脱を余儀なくされた。「とにかく“馬に乗りたい”と思いました。同時に当たり前に乗ることの“ありがたさ”を改めて感じた」。休養中はレースのVTRを見て研究を重ねた。「自分が乗っていないレースも含め、何回も見直した。乗り替わった馬に勝たれて、悔しい思いもしました」

 父・久晃氏(44)は元騎手(10年引退)で現在は調教助手。幼少期から馬は身近な存在だったが、騎手になりたいと思ったのは小学4年生の時。「漠然と馬に乗ってみたくなった。かっこいいなと…」と。甘い考えで通用する世界ではない。厳しさを知る父は反対した。それでも小林脩は雨の日も風の日も、連日乗馬に通い、トレーニングに励んだ。父もやがて息子の本気を認める。「最初は(馬術の)試合とか全く見に来なかったのに、途中からビデオカメラを回してくれるようになったんです」

 夢への挑戦を応援し続けたのが、母の優子さん。乗馬への送り迎えを欠かさず、時に落ち込む息子を常に叱咤(しった)激励した。そんな最愛の母は昨秋、息子の晴れ姿を見ることなく病気のため44歳で他界した。「いつも見守ってくれました。今でも夢に出てきます。本当につらいです」。相手の目を見て、はっきりと質問に答える小林脩が、この時だけは、うつむき加減に視線を落とした。

 4月25日の東京で戦列復帰。しばらく我慢の時が続いたが、7月18日の福島12Rで待望の2勝目をマークした。「まだまだ足りないことばかりですが、努力し続けて少しずつ進歩していきたい。父とは競馬の話ばかりしています。母は僕が騎手になったことを、誰よりも喜んでいると思います」。同じホースマンとして寄り添う父と、空から見守る母。尊敬する両親の愛情を胸に、小林脩は次の、その次の1勝を目指す。

 ◆小林 脩斗(こばやし・しゅうと)2001年(平13)11月8日生まれ、茨城県出身の18歳。美浦・奥平厩舎所属。今年3月1日の中山1Rで初騎乗(ナックダイヤ8着)。同21日の中山2Rをアイアムイチオシで制し初勝利。JRA通算102戦2勝(28日現在)。1メートル65、45.8キロ。血液型O。

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