無事是…でなくとも名馬だったダンスインザダークに合掌

[ 2020年1月10日 05:30 ]

武豊とのコンビで96年の菊花賞を制したダンスインザダーク
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 【競馬人生劇場・平松さとし】2日、ダンスインザダークが死んだという報が飛び込んできた。

 96年の菊花賞馬。同年の弥生賞を快勝し、当然、まずは皐月賞を目指した。しかし、レース6日前に熱発。1冠目を急きょ回避した。同馬を管理した橋口弘次郎調教師(引退)にその時の話を聞いたことがあった。「あるオーナーが主催されていたゴルフのコンペに参加している最中に電話が入りました。オーナーにお断りを入れて、慌てて厩舎へ帰りました」

 熱は上がったが不幸中の幸いなことにカイバ食いが落ちることもなく、程なくして平熱に戻った。そこでダービーを目標に改めて調整した。プリンシパルSを快勝してダービーに臨むと伏兵フサイチコンコルドに差され2着に惜敗してしまう。結局、橋口元調教師がダービーを制するのはその18年後。14年のワンアンドオンリーまで時間を要した。ダンスインザダークのダービーを振り返った同氏は言っていた。「当時は無事に出走できさえすれば勝てるくらいに考えていました。甘かったですよね」

 秋になり、ダンスインザダークはフサイチコンコルドへの雪辱の機会を得る。菊花賞で再び対戦することになると、ダンスインザダークが1番人気に推され、フサイチコンコルドは2番人気となった。3冠最後の関門の本馬場へ向かう地下馬道で橋口元調教師はダンスインザダークの手綱を取る武豊騎手から思わぬ言葉を聞いたと語る。

 「ユタカが馬の上から“今日は勝ってきます!!”と言いました。彼の口からそんな言葉を聞くのは初めてだったので“並々ならぬ執念を燃やしているんだろうな…”って感じたのを覚えています」

 菊花賞を優勝した後、屈腱炎を発症した同馬は引退に追い込まれる。橋口氏は「無事なら相当の活躍をしたでしょうね」と語ったが、それは皆の総意だったことだろう。今はただ安らかに眠っていただきたい。(フリーライター)

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2020年1月10日のニュース