【宝塚記念】リスグラシュー100点!女峰山の尾根思わせるトモ

[ 2019年6月18日 05:30 ]

3歳時と比べてトモの発達が著しいリスグラシュー
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 女傑の筋肉は山のように盛り上がった。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第60回宝塚記念」(23日、阪神)では史上4頭目の牝馬優勝を目指すリスグラシューに唯一の満点をつけた。達眼が捉えたのは山の尾根のように立派に成長した後肢。登山シーズンにちなんで有力馬のボディーを日本の名山になぞらえながら解説する。

 日光三山の1つに数えられる女峰山の尾根は長く険しい。標高差1800メートル、馬蹄形をした山頂の火口まで6時間も要します。山岳信仰が盛んだった時代は修験者の修行道でした。梅雨晴れの日にはそんな長大な尾根をユリ科の白いオオバユキザサが優美な趣を添えるそうです。フランス語で「優美なユリ」を意味するリスグラシュー。梅雨期の開花を告げるような体つきの変化に、女峰山の尾根に咲くユリを思い出しました。

 その立ち姿を目にしたのはG1初制覇を飾った昨年11月のエリザベス女王杯以来です。ちょっと驚かされました。少し見なかったうちに随分丸みを帯びている。円熟を絵に描いたような体つきに成長しています。とりわけ顕著に変わったのがトモ(後肢)。3歳時には細モヤシだと悪口も書きましたが、いつの間にか千両ナスのように立派になった。筋肉量を増やして見違えるほど張りが出ている。その発達したトモを細部までチェックしていくと…。昨年のエ女王杯時にはくびれていた尾の付け根の周辺が丸い形状に変化しています。馬の尾の付け根は「尾根(びこん)」と呼びますが、女峰山の尾根のように立派になった。尾根を中心としたトモの全体に力がついたことで姿勢も良くなりました。伸ばし気味にしていた頭をしっかり起こして写真に納まっている。立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合(ゆり)の花…女性の美しい姿や立ち居振る舞いを花にたとえた言葉ですが、馬名通りの優美なユリの姿になりました。

 肋がパラパラと見える最高の仕上がり。毛ヅヤも冬毛が目立った昨年のエ女王杯時とは一変して、梅雨晴れにまぶしい輝きを放っています。ハミをゆったり取り、尾も自然に下げている。力みひとつない立ち姿はユリよりも芍薬にたとえるべきか。ともあれ、ここまで落ち着き払った牝馬はなかなかいません。

 宝塚記念史上4頭目となる牝馬制覇。尾根の形が変わるほどの成長力を目の当たりにすれば、その可能性も否定できない。梅雨の女峰山。その尾根に咲き誇る「優美なユリ」です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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