【NHKマイルC】アレグリア唯一100点 令和の新モデルだ

[ 2019年5月1日 05:30 ]

唯一100点満点の桜花賞馬グランアレグリア。段違いにパワーアップし凄みが増した
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 令和最初のG1ロードを疾走するのはニューモデルカー「GRAN REIWA」だ。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第24回NHKマイルC(5日、東京)では桜花賞馬グランアレグリアに唯一100点満点を付けた。達眼が捉えたのは桜花賞から段違いにパワーアップしたトモ(後肢)。新元号と共に登場する新車や旧元号の名車になぞらえて上位馬のボディーを解説する。 NHKマイルC

 新時代に立ち向かう女傑にふさわしい力感あふれる肉体美。グランアレグリアの急成長したトモを見ているうちに新たな疑念が生じてきます。「果たしてルメールはこの3歳牝馬を抑えられるのか」。G1・3連勝で平成を締めくくったトップジョッキーといえども、いったん加速したら簡単には御しきれない。それほど凄いトモです。

 桜花賞時も牡馬顔負けの分厚いトモでしたが、わずか1カ月足らずでさらに筋肉量を増やして段違いにパワーアップしている。トモは自動車のエンジン部に該当します。大型車になぞらえれば、桜花賞では平成時代に普及した600馬力のV8(V型8気筒)エンジンを搭載していました。年号が改まった今回はフルモデルチェンジ。世界で唯一、「ブガッティ シロン」(仏国車)に積まれている1500馬力のW16(W型16気筒)を搭載しています。新元号とともに再始動するニューモデルカー。名付けて「GRAN REIWA」です(ちょっと大げさか…)。

 少なくとも暴走車になる危険はありません。一昔前のミニバンのように穏やかな表情(今のミニバンはスポーティーな表情です)。目や耳には力みがない。引き手にも余裕がある。顔つきもおてんば娘からフェアレディのような品のある淑女に変わってきました。桜花賞時は後肢を前踏みして立っていたせいで太い尾が後方から吹く風に股下へ流れていた。今回の立ち位置は正常。尾も前方から吹く微風に心地よくなびいています。

 段違いにパワーアップしたトモには男勝りな部位がバランス良く滑らかにリンクしている。分厚い胸、立派な首、大きな腹袋…。全てが野太い。再び車のエンジンに例えれば、シリンダーのピストン運動を動力に変えるクランクシャフトのように、トモのパワーを推進力に変える飛節も立派。中3週のレース間隔でも腹周りはひと絞りできるぐらいの余裕があります。オイル交換でエンジンリフレッシュを終えた直後のような驚異的な回復力。いや、そもそも桜花賞の激闘や阪神までの長距離輸送がこたえていなかったのかも…。

 ともあれ、新時代のマイル戦線を切り開いていける凄みの増した馬体です。モンスターエンジン搭載の新型「GRAN REIWA」。ドライバーが御せれば“マイル2冠”も通過点にすぎません。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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2019年5月1日のニュース