【JCダート】アワーズ、レコード圧勝!酒井涙の初G1制覇

[ 2012年12月3日 06:00 ]

ニホンピロアワーズでJCダートを制した酒井はゴール後、馬上で涙ぐむ 

 新王者の誕生だ。2日、阪神競馬場で行われた「第13回JCダート」は、6番人気のニホンピロアワーズが制してJRA重賞初VがG1初制覇となった。2着ワンダーアキュートに3馬身1/2差を付ける圧勝、勝ち時計の1分48秒8はレースレコードを0秒1更新した。デビュー15年目の酒井、開業9年目の大橋師もG1初制覇。いぶし銀の輝きが金メダルをつかんだ。

【レース結果】

 ニホンピロアワーズがゴールする直前、酒井は何度も左拳を突き上げた。デビュー15年目にして初のG1制覇。とびっきりの笑顔に謙虚さをにじませた。

 「声援の陰にはたくさんの関係者がいる。その声に最後に応えるのがジョッキーの務め。きょうはやり切れた充実感があります」

 道中は有力先行馬を見ながら。3角過ぎで王者トランセンドが失速。前を捕まえに動いたホッコータルマエに合わせてゴーサインを出すとグーンと凄い反応が返ってきた。だが酒井は安心できない。前走のみやこSが早仕掛けでの2着。ターフビジョンを見て後続との差を確認、スパートしたのは残り200メートル地点だ。

 「そろそろと思って、不安を残しながら追った」だが、後続の蹄音は最後まで聞こえなかった。

 「やったった、と思って、気がついたら凄い着差。たいした馬です」

 酒井は「1回つぶれかけたジョッキー」と自ちょう気味に話す。父が新潟・三条競馬の厩務員。自然な形で騎手を目指し、デビューした98年に25勝を挙げた。しかし、ケガとの闘いが続いて06年にはわずか1勝しか挙げられなかった。その1勝がニホンピロコナユキという小林オーナーの馬だった。その縁あって同オーナーからサポートを受け始めた翌年から勝ち星は徐々に上昇。「初めて乗った時に衝撃を受けた」同オーナーのアワーズでついにG1をつかんだ。

 酒井の勝利に、大橋師は「男にしてやりたかった」と喜んだ。自身も04年に開業してG1初制覇。助手時代にコスモドリームでオークスを制している。三重県の実家では草競馬の出走馬を飼っていた。馬ひと筋という風情を漂わせる硬骨漢の51歳。お世辞にも良血とは言えない中小牧場が生産した管理馬を「やりがいがある」と鍛え上げる。アワーズもその1頭だ。

 「最初は体質が弱くて…時間を掛けてじっくりやった。ようやく実ったかな」

 人馬とも遅咲きの花を見事に咲かせた。そのサクセスストーリーに厳寒の阪神で温かな声援が飛んだ。

 ◆ニホンピロアワーズ 父ホワイトマズル 母ニホンピロルピナス(母の父アドマイヤベガ)牡5歳 栗東・大橋厩舎所属 馬主・小林百太郎氏 生産者・北海道新ひだか町片岡牧場 戦績22戦10勝 獲得賞金3億7991万円(うち地方9313万円)。

 ◆酒井 学(さかい・まなぶ)1980年(昭55)2月4日、新潟県生まれの32歳。98年3月デビュー。同期は池添、太宰ら。同年3月8日中京12Rマチカネヒガノボルで初勝利。01年カブトヤマ記念(タフネススター)で重賞初V。通算3758戦187勝(2日現在)。公営・川崎所属の酒井忍は兄。

 ◆大橋 勇樹(おおはし・ゆうき)1961年(昭36)5月25日、三重県生まれの51歳。松田博、目野厩舎などで調教助手を務め、02年に調教師免許を取得。04年3月に開業し、同年8月8日小倉2Rリュウヨウで初勝利。通算2040戦124勝(2日現在)。

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