矢内 「昼寝」の重要さ学んだ“デビュー戦”

[ 2009年9月2日 09:17 ]

 【夏のメモリー=矢内浩美】夏のローカル。地方に出張した厩務員さんはどんなサイクルで1日を過ごしているのか。北海道開催で言えば、馬場開門が午前5時半。開門に合わせて1時間半前くらいに起床し、まずは担当馬の状況チェック。その後調教する馬のウオーミングアップを開始。そして馬場での調教を終え、クーリングダウンをして馬を洗って馬房に収める。1人2頭持ちだけにこれを2回繰り返して、その日の午前中の仕事が終了する。

 その後何をするか。大体は「昼寝」が日課だ。歓楽街が近くにあり、トレセンとは違う環境…自然と就寝時間が遅くなるのも必然。それで体力を取り戻す。そんな昼寝の重要さを記者は分かっていなかった。
 忘れもしない95年の函館開催。まだ札幌の後に開催していた時期だ。トレセンの取材経験もなく、初めて中央競馬を取材した思い出の場所がここ。1日のノルマが100行ちょっと。メーンの原稿に60行は必要だ。取材初日。ゼッケンでお目当ての馬を見つけ、動きを見て調教馬場を出たのを確認したまでは良かったが…。他馬のぶら下がり取材を終え厩舎へ向かったが、もう関係者は誰一人いなかった。慌てて隣の馬房の厩務員さんに「Aさんはいませんか」と尋ねると「もう寝たよ」の一言。頭が真っ白になった。この馬で原稿が書けなかったら紙面に穴があく。デスクの「バカヤロー」の声がどこからともなく聞こえてきた。
 あまりにも情けない顔をしていたのだろう。これぞ天の助け。その厩務員さんが「起こしてやろうか」と言って寝ている2階へ階段を駆け上がってくれた――結果、ちゃんと話が聞けて次の日の紙面は文字と写真で埋まっていた。取材初日だったとはいえ、あまりの失礼。思い出したくもないが、忘れられない記者にとっての中央競馬取材デビュー戦だった。

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2009年9月2日のニュース