思わず見入った菜葉菜の渾身作!

[ 2026年3月16日 15:30 ]

「金子文子 何が私をこうさせたか」の初日舞台あいさつに駆け付けた菜葉菜(左)と浜野監督
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】気がつけば今年も桜と花粉の季節。3月13日に日本アカデミー賞の授賞式が終わり、映画界も新作が芽吹いてにぎやかだ。2026年春の映画戦線。今回は「金子文子 何が私をこうさせたか」を取り上げる。作り手の熱がスクリーンを通して伝わってくる見応え十分の1本だ。

 ちょうど100年前の1926年3月、内縁の夫である朝鮮人の朴烈とともに大逆罪で死刑判決を受けた無政府主義者の金子文子。実態のない容疑だったため恩赦で無期に減刑されたが、同年7月に栃木女子刑務所の独房で自死。作品はわずか23歳の生涯に自ら幕を引いた文子の、死刑判決からの121日間を彼女が残した短歌をもとに描いた。

 2月28日、東京・渋谷のユーロスぺースで行われた初日舞台あいさつを覗いた。登壇したのは浜野佐知監督はじめ、主演の菜葉菜、小林且弥、三浦誠己、白川和子、咲耶の面々。

 2年半の月日を費やして完成にこぎつけた浜野監督は「この日を迎えられて感無量です。自分を決して曲げず、たった一人で巨大な国家権力に抗った、100年前に生きたこの女性を何としても今のこの世の中によみがえらせたい。そんな思いでこの映画を作りました。俳優さんたちのほとばしるような熱量で完成させることができたことをうれしく思います」と熱く語った。

 主演の菜葉菜は大入りに「胸がいっぱい。浜野監督の“私が金子文子を撮るんだ”という強い思いのもとに、スタッフ、キャスト、そしてクラウドファンディングで応援してくださった方々、すぺての関わってくださった皆さまの思いがあって作られた作品です。今の時代だからこそ、この映画を届けたいと思いますし、皆さまに響くものがあるのではないかと思います」と強調した。

 父親が出生届を出さなかったことから戸籍もなく、ろくに学校にも行けなかった文子。「人間として生きているのに存在していない無籍者。それでもなおかつ泥の中を這(は)いずり回るようにして自分の思想をつかみ取っていった文子を今の世の中によみがえらせたかった」と吐露した浜野監督。「尊厳を持って生きた人」の言葉に力がこもった。

 1971年にピンク映画で監督デビュー。「私にとっては妹みたいな存在。苦労を知るだけにサチ(浜野監督)が映画を撮ると言ったら、どんな役でもいいから出たいと思う」と白川が話すように、男性社会の中でもまれながら生きてきたのが浜野監督で、そんな監督の“なにくそ精神”が女優歴20年になる菜葉菜の背中を押した。

 「知れば知るほど、ある意味、恵まれている時代に生きている私に、あんな壮絶な人生を送った金子文子が出来るんだろうか。ここまで不安になった役はなかった」と正直に打ち明けたが、「私もここまで“なにくそ精神”でやってきました。そこにあるのは怒りだったり、悔しさだったり。そういう思いがバネになって今まで続けてこられている気がします。浜野監督の“なにくそ精神”ともリンク。監督が描く文子をやればいいんだと思えば肩の荷が下りた気がしました」と撮影を振り返った。

 そんな菜葉菜の熱演に、浜野監督も「金子文子が乗り移ったかのよう。彼女の中から(文子が)出てくるんですよ」と絶賛した。菜葉菜は「国からも親からも、その存在を認められなかった文子。23歳という短い生涯でしたが、その思いだったり魂は作品を通してこれからも永遠に生き続けてくれると信じています」と締めくくった。「ヘブンズ ストーリー」「どんづまり便器」「赤い雪」「TOCKA[タスカー」]などで存在感を示してきた菜葉菜の代表作にもなりそうな作品には古舘伊知郎らも拍手を惜しまない。

 昨年9月に90歳で永眠した吉行和子さんが祖母役で出演しており、その鬼気迫る演技も書き添えておきたい。全国順次公開中。

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