「ばけばけ」史実も見送らず 錦織役モデル西田千太郎とは?吉沢亮の横顔&台詞なし1分にネット反響&裏側

[ 2026年2月13日 08:15 ]

連続テレビ小説「ばけばけ」第95話。錦織友一(吉沢亮)は船着き場にレフカダ・ヘブンを見送りに行かず、自宅で喀血し…(C)NHK
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 女優の髙石あかり(23)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は13日、第95回が放送され、“3人目の主人公”英語教師・錦織友一と唯一無二の親友レフカダ・ヘブンの“今生の別れ”が描かれた。ラストシーン約1分は台詞がなく、俳優の吉沢亮(32)が表情のみで錦織の心情を体現。涙の視聴者が相次ぎ、インターネット上で大反響を呼んだ。制作統括の橋爪國臣チーフ・プロデューサー(CP)は吉沢の演技を絶賛し、舞台裏を明かした。

 <※以下、ネタバレ有>

 「バイプレイヤーズ」シリーズやNHK「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」など会話劇に定評のある、ふじきみつ彦氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算113作目。松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で日本の怪談を世界に紹介した明治時代の作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに、怪談を愛してやまない夫婦の何気ない日常を描く。

 第95回は1891年(明治24年)11月15日、松野トキ(髙石あかり)たちが松江を離れる日。錦織友一(吉沢亮)は「体調があまりよくない」と見送りに行かない。

 船着き場。トキはレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と錦織邸に行き、謝罪しようとしたが、ヘブンは「モウ、ダイジョウブ。ワカレル、シマシタ」――。

 錦織は屋根裏部屋にいる。ヘブンの「日本滞在記」を開くと、咳き込んだ。

 松江の人々が手を振る。遠ざかる汽船の上。ヘブンの手には、錦織が置いていった虫かご。「アリガトウ!」――。

 咳を押さえた錦織の左手には血。喀血(かっけつ)。宙を見つめる目に涙が込み上げる。虫の音だけが聞こえる。

 錦織役のモデルとなったのは、島根の教育者・西田千太郎。八雲とセツさんの媒酌人も務めた、公私にわたる親友。結核を患い、1897年(明治30年)、34歳の若さで天に召された。

 八雲が熊本へ転居した理由については「気候」や「給与」などが挙げられている。

 八雲の「知られざる日本の面影」には松江を離れる際の記述があり、約200人の生徒が八雲邸から船着き場まで付き添うなど、多くの見送りの中、「顔が見られなくて一番寂しいのは、友人の西田だ。喀血したため、ここ二ケ月間病床に伏している」(※1)。橋爪CPは「西田千太郎の日記にも病気で船着き場に行けなかった事実は書かれているのですが、そこに至る思い、本心までは分かりません。彼がなぜ八雲を見送らなかったのか。そこを出発点にストーリーを練り上げました」と明かした。

 この日のラストシーンは約1分。涙と憂いを湛えた錦織の横顔のみ。台詞はなかった。

 ヘブンとの出会い、通訳から「リテラリーアシスタント」(創作活動のサポート)への関係性の変化、学歴・教員免許の問題と「錦織のことは細く長く描いてきましたが、それらが集約されるシーンになりました。横顔だけだった次週予告はここの映像を使いましたが、吉沢さんのお芝居は台詞がなくてもすべてを表現してくださるので、錦織の心情や状況を言葉で語る必要はないのでは、という方向性で作っていきました」。吉沢への全幅の信頼もあっての「ばけばけ」屈指の名場面誕生となった。

 吉沢の演技を後押ししたのが、美術チーム渾身のセット。松江に現存する西田邸を参考に“屋根裏部屋”を再現。錦織が本に囲まれ、勉学に励んできたことが一瞬で伝わる。吉沢もスタッフとともに西田邸を訪れ、2階の部屋を体感。実際の日記や手紙を読むなどした。

 「そして今回、収録でこの空間に入って、錦織が屋根裏部屋で過ごしてきた日々を背負って演じてくださいました。オンエア上は約1分ですが、2~3分ぐらいはカメラを回していたと思います。撮影の前に、吉沢さんと(第19週担当のチーフ)演出の村橋(直樹監督)が2人きりで打ち合わせをしていて、想像するに、錦織の思いをどこまで表情に出すかを確認したのではないでしょうか」

 錦織が校長になれなかったのも、史実から着想。庄田多吉(濱正悟)の参考となった実在の人物は教育者・本庄太一郎で、西田とともに上京し「文検(文部省中等教員検定試験)」を受験。本庄が全5科目に合格したのに対し、西田は4科目1位合格を成し遂げたものの、英語が不合格。東京帝国大学卒業の資格は得られず、西田の経歴が島根県尋常中学校“教頭心得”“校長心得”と“代理・補佐”止まりなのはそのためだ。将来を嘱望されながら、家庭の事情などもあって松江に残った西田とは対照的に、同郷の若槻礼次郎は内閣総理大臣を務め、岸清一は“近代スポーツの父”と慕われた。

 ヘブンとの別れを、雨が降る松江中学校の中庭としたのはドラマオリジナル。台本のト書きに天気の指定はなかったが「晴れや曇りよりも、2人の心情が代弁できて、際立つシーンになりました。(2021年の大河ドラマ)『青天を衝け』で円四郎(堤真一)と慶喜(草なぎ剛)の雨のシーンが印象的だった回(第16回)も村橋が担当で、今回も彼らしい演出だったと思います」と振り返った。

 16日から新章「熊本編」に入るが、錦織の出番はまだある。橋爪CPは「錦織はなぜ船着き場に来なかったのか。純粋に体調の問題だけだったのか。ヘブンとの友情はどうなるのか。彼にとって一番の幸せとは何なのか。この先、描いていきますので、視聴者の皆さんも錦織の人生に思いを巡らせていただけるとうれしいです」と呼び掛けた。

 松江随一の秀才と謳われ、輝かしい未来が待っているはずだった錦織。「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」と思える瞬間が“悲運の大盤石”に訪れることを願わずにはいられない。

 <※1>【参考文献】ラフカディオ・ハーン、池田雅之訳「新編 日本の面影」(角川ソフィア文庫)

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