【売野雅勇 我が道25】純粋な中西圭三と「Woman」 本人が恥ずかしくて歌えないと…

[ 2025年8月26日 07:00 ]

中西圭三「Woman」の直筆歌詞

 中西圭三くんとの出会いは“数字”でした。当時、数字に凝っていた僕のところに現れたのが11月11日生まれの中西くん。プロフィルを見て「この人には絶対書こう!」と思いました。というのも僕は2月22日生まれ。1と2は互いに補い合う数字と知っていたので、デモテープも聴く前からいい作品ができる自信がありました。

 プロデューサーの工藤史人さんと一緒に僕のオフィスにやってきた中西くんは純朴な青年でした。1991年11月発売の2枚目のシングル「片想いのバースデー」から彼との作品作りがスタートしたのです。

 中西くんの代表曲は、第3弾シングルとして92年1月22日に発売された「Woman」。実はこの曲には僕が書いた別の歌詞がついていて、タイトルも「Silent Memory」。それがCM曲に起用されヒットすると、注目されていた宝飾ブランド「カメリア・ダイヤモンド」のタイアップが決まったことで、CMに合わせ前向きな女性にエールを送るような歌詞が欲しいと依頼されました。

 CMコンセプトが書かれたシートにはセクシー、ゴージャスなどの文字が並んでいました。意向を汲(く)んでそんな言葉を使ったサビを書いた歌詞を渡すと、工藤さんから「本人が恥ずかしくて歌えないと言っている」と連絡が来ました。

 いくらCMのコンセプトとはいえ中西くんがベリーピュアだと知っていた僕は「そうだよな」と納得。歌詞を再考している時に、♪君が探してる 未来は君の中にあるよ――と中西くん本人が世の女性たちに呼びかけるメッセージソングにすべきだと気がついたのです。それによって当初のタイトルとは全く無関係で、たった一言で強いメッセージを持つタイトル「Woman」が偶然に誕生した瞬間でした。

 実は当時の僕は応援ソングを書くことに抵抗がありました。頑張れとか負けるななどのありきたりな言葉はカッコ悪いと考えあぐねていた時、当時流行(はや)っていた「自分探し」という現象のことが頭によぎりました。

 自分という人間はどこかに探しに行かなくても、己の中にすでにあると考えていた僕はこの思いを歌詞にすることにしました。何かを求めてどこかにではなく、求めているものは自分の中にある。自分が好きな生き方や考えを直接歌詞にすることに気付いていなかった僕にとっても転機の曲になりました。

 そうして生まれたこの歌は中西くんのキャリアの中で最大のヒット曲になりました。さらにこの曲以降の歌手としての路線が固まったことで中西くんから「歌を伝えていく人間としての魂を頂いた」と言われた時は、ジーンとしました。数字に素直に従った結果、互いを補い合うどころか、それ以上の化学反応を起こすことができたなぁと思っています。

 ◇売野 雅勇(うりの・まさお)1951年(昭26)2月22日生まれ、栃木県足利市出身の74歳。企業のコピーライターなどを経て、81年作詞家に。中森明菜「少女A」、チェッカーズ「涙のリクエスト」、郷ひろみ「2億4千万の瞳」などのヒット曲を生み出した。これまでに1500曲以上の歌詞を制作。2026年に活動45年の節目を迎える。

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