「あんぱん」脚本家・中園ミホ氏「やなせさんのおかげ」戦争描写への覚悟「花子とアン」の迷いから“深化”
「あんぱん」脚本・中園ミホ氏インタビュー(2)
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「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどの話題作を放ち続けるヒットメーカーの中園ミホ氏(66)がオリジナル脚本を手掛け、女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)も残り5週(25回)となった。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルにした物語の終着駅は…。中園氏は2014年度前期「花子とアン」以来11年ぶり2回目の朝ドラ脚本を完走。2年半にわたった執筆・作劇の舞台裏を聞いた。
<※以下、ネタバレ有>
朝ドラ通算112作目。戦争に翻弄されながら激動の時代を生き抜き、「逆転しない正義」にたどり着く夫婦、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の軌跡を描く。
戦後80年の節目の年に放送された今作。第11週「軍隊は大きらい、だけど」(6月9~13日)&第12週「逆転しない正義」(6月16~20日)と2週にわたる本格的な戦争パートが大きな反響を呼んだが、中園氏は「花子とアン」でも真正面から戦争に向き合っていた。
主人公・花子(吉高由里子)は“ラジオのおばさん”として、兄・吉太郎(賀来賢人)は憲兵として、幼なじみ・朝市(窪田正孝)は教師として、親友・醍醐(高梨臨)は従軍記者として、親友・蓮子(仲間由紀恵)は母として…。終盤、登場人物それぞれが戦争に翻弄される。「花子とアン」の作中に「あんぱん」の登美子(松嶋菜々子)や蘭子(河合優実)がいれば、その“直言”に花子たちが救われる場面があったかもしれない。
花子がラジオで読むニュースは、次第に軍事関係のものばかりに。中園氏は「朝ドラは『毎朝、視聴者の皆さんに元気になっていただきたい』と願って書いていますから、ヒロインが戦争に加担していくことに責任を感じるというのは、朝ドラの描き方としてどうなのか。果たして、それが朝ドラで求められるものなのか。怖さや迷いはありました」と当時を振り返った。
今作はさらに踏み込み、女子師範学校時代、のぶは“愛国の鑑”と呼ばれる軍国少女に。卒業後は教師となり、軍国教育を行う。敗戦を迎え、信じていた“正義は逆転”。嵩とともに「逆転しない正義」を見つける旅が始まった。
「やなせさんを描くということは、戦争を描くということ」――。やなせ氏の戦争体験が空腹の人を救う「アンパンマン」誕生につながったのはもちろん、「『アンパンマン』以外にも多くの作品に、やなせさんの戦争への思いが散りばめられていますから」。例えば、絵本をアニメ化した「チリンの鈴」は復讐がテーマ。岩男(濱尾ノリタカ)と中国の少年・リンの物語に重なる。重厚な展開に「引き留めるスタッフさんもいましたけど、そういう意見も覚悟の上。今回は企画の段階から『目を逸らさずに描くぞ』と心に決めていました」と明かした。
戦争描写は、実質的には若き石工・原豪(細田佳央太)が出征した第6週「くるしむのか愛するのか」(5月5~9日)から始まり、ドラマ後半の戦後編も通奏低音に。のぶ&嵩はもちろん、第102回(8月19日)、八木(妻夫木聡)と蘭子も「絶対」という言葉をめぐり、お互いに大切な人を失ったことを知る。第103回(8月20日)、“コン太”こと康太(櫻井健人)は「たまご食堂」を開くことになった。
「『正義は逆転する・逆転しない正義とは何か』を描くべくスタートしましたけど、書き終えて、そして、役者さんたちが己の肉体を通して魂を込めて演じてくださると、その思いがより一層、強くなりました。そして、あらためて今の世の中を見渡すと、世の中が傾いていく時には、他人事として考えてはいけない、強いものに自分がなびきそうになった時には、用心しないといけないんだ、と。やなせさんの史実がなければ、ここまで長く、深く戦争のことは書けなかったですし、その覚悟が決まったのもやなせさんのおかげ。今は『書かせていただいて、本当にありがとうございます』と感謝をお伝えしたい気持ちが一番です」
この日の第105回、ついに「おじさんアンパンマン」が誕生。物語は佳境に入る。
=インタビュー(3)に続く=
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