「あんぱん」千尋役・中沢元紀 25歳が考える「戦争」戦時中の祖父の1枚に「何で…」兄弟再会シーン裏側

[ 2025年6月12日 08:15 ]

連続テレビ小説「あんぱん」で朝ドラ初出演、柳井千尋役熱演が話題の中沢元紀(C)NHK
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 NHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は12日、第54話が放送され、嵩(北村匠海)と海軍少尉となった弟・千尋の“兄弟二人芝居”が話題を呼んだ。「アンパンマン」が生まれるまでの夫婦の軌跡を描いた物語で、嵩はやなせたかしさんがモデル。その弟で誠実な千尋を好演する俳優・中沢元紀(25)に、初の朝ドラでの撮影秘話や戦争に対する率直な思いを聞いた。(那須 日向子)

 <以下、ネタバレあり>

 「この戦争さえなかったら、愛する国のために死ぬより…わしは愛する人のために生きたい」

 1944年(昭和19年)夏、自ら志願し海軍少尉となった千尋は嵩と小倉の旅館で再会。5日後には佐世保から駆逐艦に乗り込む千尋は兄を前に初めて本心をぶつけた。

 「戦争」は、やなせさんの人生と作品を描く上で切り離せないもの。中沢は初出演となる朝ドラに臨むにあたって当時の時代背景を研究した。

 育ての母・千代子を演じた戸田菜穂からは、反町隆史主演の戦争映画「男たちの大和/YAMATO」(2005年公開)をすすめられ、鑑賞。第二次世界大戦末期、沖縄特攻作戦に出撃した戦艦大和と、その乗組員たちの物語で、海軍少尉の千尋の思いを巡らせた。さらにやなせさんの半生を描いた著書「アンパンマンの遺書」(岩波書店)や愛弟への思いを詩と絵でつづった「おとうとものがたり」(フレーベル館)を読み込み、当時を生きた人々の思いを体に染み込ませていった。

 兄弟再会シーンを撮影する直前、北村との打ち合わせは最小限だったという。「嵩として匠海さんが全て受け止めてくれるだろうと。2人で綿密に話し合って作り上げたシーンではなく、その場で生まれる“爆発力”を大事に少ない準備で本番を迎えました」

 こうして挑んだ約12分「ほぼ通し」の兄弟2人芝居。「放送されたシーンは涙を流していないのですが、テストの時、僕はボロボロ泣いていたので、どちらがいいのか匠海さんと話し合いました。兄弟としてであれば、涙が流れる。でも軍人としてであれば、涙を流さず“行ってきます”と言う」。葛藤の末に生まれた“名シーン”だった。

 実は、この再会シーンを撮影後、祖父母宅に突然呼ばれたという。そこで陸軍として戦地に赴いていた祖父の当時の手帳と重たいアルバムを見せてもらった。1ページに4枚ずつ貼られた白黒写真。「大砲や飛行機、戦闘機が写っているものもありました」。戦時中に思いを馳せる中で一つ気になる写真があった。陸軍の軍服を身にまとった祖父が笑みを浮かべていたのだ。

 「“戦争はしちゃいけないもの、良くないもの”と教えられてきたので“なんで笑っているんだろうな”という思いがあった」。ただその祖父の笑顔は自身の脳裏に焼き付いた。「戦争へ行くことがよしとされていた時代ではあるので、全てを理解することは難しい。でもこうやって考える時間をつくることが大事なのだろうなと思います」

 今年は戦後80年。25歳の自身は何を思うか。「“逆転しない正義”という言葉を聞いた時に納得した。“困っている人に一切れのパンを与える”そんな優しさを持った人が増えたら」とやなせさんの言葉を引用し思いを明かす。「軽々しく言えることじゃないので難しいのですが」と付け加えながらも、その目は真剣だ。

 世界ではなお戦火が絶えない。「自分なりに戦争を考えるきっかけになる作品になれば」と願いを込める。平和とは何か、「あんぱん」を通じて今一度考えたい。

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