NHKドラマP驚く 79歳・宮本信子の衰えぬ「記憶力」 「母の待つ里」方言の長セリフを「4カ月暗記」

[ 2024年9月21日 08:01 ]

NHK BSで特集ドラマ化される浅田次郎氏の最新長編作「母の待つ里」。「ちよ」を演じる宮本信子(C)NHK
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 “異色の家族小説”として大反響を呼んだ浅田次郎氏の最新長編作を原作とする特集ドラマ「母の待つ里」が、21日、28日の2週に渡りNHK BSで午後9時から放送される。俳優の中井貴一(63)、松嶋菜々子(50)、佐々木蔵之介(56)ら実力派俳優陣が、高い評価を得た原作の魅力を余すことなく表現する。中でも異彩を放つのは、ベテラン女優・宮本信子(79)の演技だ。制作統括の高城朝子氏がスポニチアネックスの取材に応じ、撮影秘話を語った。(中村 綾佳)

 本作は、同局連続ドラマ「仮想儀礼」やドキュメンタリー番組「アナザーストーリーズ」などを手掛けた高城氏が制作統括を務めた。岩手・遠野の美しい原風景を舞台に、登場人物の心情を丁寧に描写。見る者の郷愁を誘う、唯一無二のドラマをつくり上げた。

 演出は「NHKスペシャル」や「中国王朝シリーズ」などのドキュメンタリーで原作の浅田次郎氏と度々タッグを組んできた阿部修英氏。阿部氏にとって初のドラマ演出作となった。

 日本を代表する俳優陣が名を連ねている豪華なキャスティングは、実は阿部氏と縁の深い面々だ。中井と佐々木は、ドキュメンタリーで阿部氏とともに海外ロケに同行した経験があり、松嶋は、阿部氏が手掛けた番組のナレーションを担当。過去に作品をつくり上げた息ぴったりの“チーム”が、再び集結した形だ。

 そんな豪華俳優陣の中でひときわ存在感を放つのが、79歳の大ベテラン女優・宮本。宮本演じる「ちよ」は、松永徹(中井)、古賀夏生(松嶋)、室田精一(佐々木)の3人の“子供”に対し“母”として、全4話にフル出演して対峙する。

 高城氏は、宮本の演技について「本っ当に凄いんです」と興奮気味に、目を輝かせて語る。「宮本さんが一番出演機会が多いので、セリフの量がダントツで多い」と明かし、さらに「遠野が舞台なので、セリフはすべて方言なのですが…実は、普通の東北弁ではなく、浅田次郎先生が創作した“浅田弁”なんです。だからちょっと、クセがある」と、ドラマでは東北弁をベースとしたオリジナルの方言を使用していると告白。「あの量のセリフを、標準語で覚えるのもかなり大変だと思うんですけど…一度も、つっかえているところを聞いたことないんです。セリフが飛んでしまったり、忘れたりしてしまうというようなところを、一度も見ませんでした」と、第一線で活躍し続ける大女優の矜持を垣間見たという。

 本作の撮影は今年4月から1カ月間に渡り、岩手・遠野市で行った。高城氏は「宮本さんは、台本を“12月には欲しい”とおっしゃって。方言指導の先生と話し合って、撮影までの4カ月間、ずっと(オリジナル方言の)録音を聞き続けて挑んでくれました」と、宮本は多忙の合間を縫い、長い時間をかけてオリジナルの方言を身に沁み込ませた。作品に懸ける思いを受け、高城氏は「お年のことを考えると“信じられない”と、ほかの出演者さんもおっしゃっていました。本当に、凄いという言葉では表せられない。とんでもないことだと思うんです」と、言葉を尽くして称賛する。

 宮本のこだわりは、実は演出面・美術面にも表れている。撮影セットを組んだ制作班は、物語を象徴する「ちよの家」を丁寧に表現。原作の浅田氏も感動するほど、小説の世界観を忠実に再現した。

 宮本もセットの写真を見て感嘆したが、一言「イスを置いてほしいわ」とつぶやいたという。「ちよは86歳。年齢柄、多分いろいろな場所にイスを置いていると思うの。年寄りっていうのはね、いろんなところに腰をかけるようにしてるものなのよ」と、役と向き合い続けた宮本ならではの提案で、「ちよの家」は、よりリアリティーを増した。

 「宮本さんのアドバイスで、いたるところにイスを置きました。それも、形や柄が統一されてない、ばらばらのイス。本当におばあちゃんの家に行ったような空間になりました」と高城氏。オリジナル方言によるセリフも、表情も、映像にも、並々ならぬこだわりが詰められている。高城氏は「ぜひ、細部にも注目して見ていただけると嬉しいです」と胸を張った。

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