「虎に翼」夫婦別姓や同性婚 ジェンダーや社会問題描写への脚本家の思い「問題提起に」男女問わず幸せに

[ 2024年9月15日 12:00 ]

「虎に翼」脚本・吉田恵里香氏インタビュー(4)

連続テレビ小説「虎に翼」の脚本を担当した吉田恵里香氏。約2年にわたる執筆を振り返った(C)NHK
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 女優の伊藤沙莉(30)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「虎に翼」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)も残り2週間。オリジナル脚本を手掛けた吉田恵里香氏(36)が約2年にわたる執筆・作劇を振り返った。視聴者の議論も呼んだ「夫婦別姓や事実婚」「セクシュアリティー(性的マイノリティー、LGBT)や同性婚」など、朝ドラとしては異色の社会問題・ジェンダー問題の描写について、吉田氏に聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 向田邦子賞に輝いたNHKよるドラ「恋せぬふたり」などの吉田氏が脚本を担当した朝ドラ通算110作目。日本初の女性弁護士・判事・裁判所所長となった三淵嘉子氏をモデルに、法曹の世界に飛び込む日本初の女性・猪爪(佐田)寅子(ともこ)の人生を紡ぐ。吉田氏は初の朝ドラ脚本。伊藤は2017年度前期「ひよっこ」以来2回目の朝ドラ出演、初主演となった。

 結審・判決言い渡しに8年を要した「原爆裁判」と並行し、第21週(8月19~23日)は「夫婦別姓や事実婚」「セクシュアリティー(性的マイノリティー、LGBT)や同性婚」、第22週(8月26~30日)は「女性の社会進出」、第23週(9月2~6日)は「更年期障害・認知症や介護」をテーマ・題材にした。

 轟(戸塚純貴)については第51回(6月10日)で同性愛者であることを打ち出し、第103回(8月21日)でパートナー・遠藤(和田正人)らとの集いを通じてセクシュアリティーや同性婚の問題を描いた。吉田氏は両回のオンエア後、自身のSNSに長文を投稿。自身の思いを明かした。

 国民の法の下の平等を規定した「日本国憲法第14条」を主軸の一つに展開してきた今作。現代に通じる社会問題を盛り込んだことについて、吉田氏は「平等に扱われていない人たちが当時からいたということ、当時普通いた人たちの姿をきちんと描きたいという気持ちが強かったです」と心境を吐露。吉田氏の言葉を借りれば“透明化された人”をそのままにしない、寅子の台詞を借りれば第115回(9月6日)の百合(余貴美子)への「苦しいって声を知らんぷりしたり、なかったことにする世の中にはしたくないんです」につながる。

 尾崎裕和チーフ・プロデューサーも「初期の段階から決めていたというよりは、戦後の民法改正に携わり、人生を積み重ねた寅子なら、姓について悩み、こういう思考の筋道を辿って2回目の結婚に至るんじゃないかと、吉田さんがストーリーを紡いでくださいました。同性愛者の轟も、年齢を重ねてパートナーが見つかれば、法的な婚姻関係の問題にぶつかるのは必然的な流れだと思います」と説明したが、吉田氏も「法律家の寅子が向き合ってきた事柄や出会ってきた人を考えれば、通る道かなと思っていたので“朝ドラで挑戦的な、尖ったものをやる”というような気持ちでは書いていません」と経緯や狙いを明かした。

 「寅子たちが生まれるもっと前からある問題で、70年以上経った今、以前より状況は改善されてきましたが、まだ課題もありますので、思いを馳せていただくきっかけになれば、うれしく思います。こういうテーマを扱うことや作品への好き嫌いは視聴者の皆さんそれぞれですけど、当時から悩んでいる人がいて、今も悩んでいる人がいること自体は否定してほしくないですし、少しでも知っていただいて、問題提起につながれば、エンターテインメントでやる意味はあるんじゃないでしょうか。当事者の方々が矢面に立たないように、作品を通して知る、作品がきっかけになるのも大事なのかなと思っています。私が何を言われても、お叱りを受けても構わないんです。“そのうちやれるから、今は怒られない範囲にしておこう”というマインドだと、どうしても物事が先に進むスピードが遅く、問題が先送りになってしまうんじゃないでしょうか。今回のような描写も、自然なことになればいいなと思います」

 この思いも第108回(8月28日)、妊娠した後輩・秋山(渡邉美穂)のため、寅子が桂場(松山ケンイチ)に意見書を提出し「生き残らなければ、同じ場所に立てない。それは果たして平等と言えるのでしょうか?今、明らかに目の前にある問題を、次の世代にそのまま先送りにしていくのが苦しいんです」につながる。

 困難に立ち向かう女性像が目立つ今作だったが、法を守ってこの世を去った花岡(岩田剛典)や総力戦研究所にいた航一(岡田将生)らも生きづらさを抱え、実は性別は関係ない。

 「女性が生きやすくなっても、男性が生きにくくなるわけではありません。バリバリ働きたい人、程よく働きたい人、家族を支えたい人…男女問わず、全員が心から望む場所に行けて、心からなりたいものになれて、自分を発揮していける状況が一番の幸せだと思っています。そのためには、寅子だけが善人で正しいだけという描き方はフェアじゃないですし、みんな欠点もあって間違える時もあるわけですから、どのキャラクターも美化しすぎないように心掛けました。“自分の人生は自分で決める”も『虎に翼』の大きなテーマの一つ。全員がそうなればと思って、最後まで書き切りました」と願いを込めた。

 =インタビューおわり=

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