陳建一さん 天国の厨房へ 「料理の鉄人」で活躍、お茶の間で人気 代名詞のマーボー豆腐もう食べられない

[ 2023年3月15日 04:50 ]

フジテレビ「鉄人シェフ同窓会 絆の鉄人」に出席し、当時の衣装に身を包み笑顔を見せる(左から)フレンチの坂井宏行、和の道場六三郎、中華の陳建一、和の中村孝明、イタリアンの神戸勝彦の各氏(18年2月撮影)
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 フジテレビの番組「料理の鉄人」で「中華の鉄人」として活躍し、日本の中華料理界をリードした料理人で四川飯店グループ会長の陳建一(ちん・けんいち、本名東建一=あずま・けんいち)さんが11日午後0時7分、間質性肺炎のため東京都の病院で死去した。67歳。東京都出身。葬儀は近親者のみで行った。後日、お別れの会を開く予定。

 同グループの担当者によると、数年前に肺がんを患ったが、その後は回復。昨年末までは時折厨房(ちゅうぼう)に立ったり、元気にイベント出演などをしていた。今年に入り、体調を崩して入院。最期は、店を引き継いだ赤坂「四川飯店」のオーナーシェフで長男の建太郎氏ら家族にみとられて「幸せに旅立ちました」(担当者)という。

 「四川料理の神様」と呼ばれた故陳建民さんの長男。大学卒業後、建民さんが経営する四川飯店で修業を始め、建民さんが日本にもたらした四川料理を、より日本人の口に合うようにして広めた。建民さんは日本人に食べやすいように本場四川料理をマイルドにしたが、陳さんは辛みになじんだ日本人向けにさんしょうを利かせた。父の味を守り進化させ、日本で初めてマーボー豆腐専門店を出店するなどマーボー豆腐ブームを起こした。

 料理人としての知名度を一気にお茶の間に広めたのが「料理の鉄人」。さまざまなジャンルの料理人同士が、与えられた素材で真剣勝負を繰り広げる人気番組で、陳さんは黄色のコスチュームで出演。和食の道場六三郎氏(92)、フレンチの坂井宏行氏(80)とともに一大ブームを築いた。陳さんは番組開始から終了まで「中華の鉄人」として活躍。人なつっこい笑顔とユーモアあふれる人柄が浸透した。

 四川飯店グループ担当者は、陳さんが常々言っていた言葉を「皆さんに笑顔でおなかいっぱいになっていただきたい、ということ」と明かし「堅苦しくなく料理を楽しんでほしいという思いを持っていました」と話した。

 ≪13年黄綬褒章≫

 陳 建一(ちん・けんいち、本名東建一=あずま・けんいち)1956年(昭31)1月5日生まれ、東京都出身。東京中華学校を経て、玉川学園高校、玉川大学卒。90年赤坂「四川飯店」社長就任。NHK「きょうの料理」などに出演。2013年黄綬褒章。日本中国料理協会会長も務めた。

 ▽料理の鉄人 1つの食材で「鉄人」と「挑戦者」の料理人が腕を競う料理バラエティー。1993年10月から99年9月まで放送された。最高視聴率23.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、平均視聴率14.8%と高い人気を誇った。主宰・鹿賀丈史の存在感や福井謙二アナの実況も話題に。海外人気も高く、2004年には米国で現地版が制作され、18年まで放送が続いた。

 ▽間質性肺炎 肺胞の壁やその周辺に炎症が起こることで酸素や二酸化炭素のやりとりが行われにくくなり、息切れ、たんのないせき、発熱などが引き起こされる症状。進行すると、呼吸困難や呼吸不全につながる。原因としては、関節リウマチや膠原(こうげん)病、カビやほこりの吸入、抗菌薬の服用などがある。また、一般に喫煙が関与している可能性が指摘されている。予防には禁煙をはじめとする、規則正しい生活で呼吸を整えることが推奨されている。 

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