“真理を追究”王道が王道破った 谷川浩司17世名人と師匠・杉本昌隆八段が語る藤井王将の凄み

[ 2023年3月13日 05:08 ]

第72期ALSOK杯王将戦第6局第2日 ( 2023年3月12日    佐賀県上峰町「大幸園」 )

感想戦で対局を振り返る藤井王将(撮影・西尾 大助)
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 第2局で立会人を務め、スポニチ本紙「谷川EYE」で解説や展望を担当した谷川浩司17世名人(60)は「みんなで課題を与え、寄ってたかって藤井王将を強くしている」と苦笑して評した。第1局から羽生の戦型選択を受け入れ、一手損角換わり、相掛かり、雁木(がんぎ)、角換わり腰掛け銀、横歩取り、角換わり早繰り銀と進んだ7番勝負。相手の工夫が待ち構える局面へ飛び込み、打開策を戦前の研究、もしくは対局中に繰り出せたからこその王将初防衛であり、12度の全タイトル戦敗退なしの偉業だった。

 戦型選択を相手に委ねるスタイルは16年10月の四段昇段以降、一貫する。師匠の杉本昌隆八段(54)は同年12月のプロデビュー戦、加藤一二三・九段戦から「(加藤得意の)棒銀を避けようとしなかった」。確かに開始から11時間近くが経過した投了後、「教わろうという気持ちが強かった」と学生服姿の当時14歳も振り返っていた。

 「羽生九段も若い頃からそうだった。相振り飛車も指す羽生九段の方が藤井に比べると(戦型選択は)幅広いが、相手の得意から逃げないのは一緒」とも杉本は語った。杉本は羽生の2歳年上で同世代。裏付けになると思われるのが、藤井の勉強法だ。

 直近の対戦相手の将棋を調べるより、関心ある戦型や課題局面での対応を消化していく。藤井自身、「定跡を研究するのは勝つためというより趣味に近い。対局に向けて準備するより、普段から定跡をつくっておいて…という感じです」と語っている。谷川は「勝ちたいより強くなりたい、“将棋の真理を追究したい”を貫いてる。私の経験では強くなればなるほど将棋の大きさ、底の深さが分かって、やはり何も分かってないと分かるところはありました」と言う。

 王道が、王道を破った。勝利へのこだわりよりも真理を究めていこうとする姿勢。羽生が約30年前から歩んだ道をたどり、実現すら危ぶまれた黄金対決で実践した。史上最年少5冠が永世7冠を返り討ちにしたタイトル戦初対決は、そう記憶されるべき7番勝負になった。(筒崎 嘉一)

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