朝ドラ「おちょやん」名場面の裏側 東野絢香は「みなさんの愛を感じた」

[ 2021年2月23日 10:30 ]

NHK連続テレビ小説「おちょやん」で、みつえを演じる東野絢香(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「おちょやん」の第55回(2月19日放送)に、忘れがたい名場面があった。

 今週の放送では既に、仲むつまじい夫婦となっている、みつえ(東野絢香)と福助(井上拓哉)。先週の放送では、千代(杉咲花)らに交際を打ち明けながらも、お互いの両親に反対されて進退窮まっていた。

 そして、2人が駆け落ちを念頭に訪れた神社の場面。みつえは母親のシズ(篠原涼子)に出くわすと、涙ながらに「お願いします。福助さんと結婚させておくれやす」と土下座した。

 若い女性の、しかも着物姿での土下座は鮮烈だった。これまで私生活で見たことがない。演じた東野も、女優活動の中で土下座の芝居は初めてだったという。もっとも、土下座のシーンがあったから名場面だと思ったわけではない。

 あの場面は、意を決して語り続ける東野の様子、つられて動く井上の様子、心配そうに見守る杉咲の様子、感極まって泣く篠原の様子と、全ての芝居が胸に響いた。一つの場面に4人の出演者がいて、その全員が良く映っていた。そこには、それぞれの演技力だけではない、何か根本原因があるはずだ。

 東野はあの場面の撮影をこう振り返る。

 「撮影が始まる前、杉咲さんが『そんなに緊張していたら私にも移っちゃうよ』と言って和ませてくれました。あのシーンは日差しの関係で6回くらいやったんですけど、私が『何回もすみません』と言うと、篠原さんは『大丈夫よ。泣くと疲れるよね』と言ってくださいました。あのシーンは、たくさんの方にしっかり支えていただいた感覚があります。お母さんとしゃべっている時はお母さんに助けてもらった感じです。みなさんの愛をあらためて感じました」

 共演者たちの愛情。それが名場面を作り出した原因ではないか。涙ながらに土下座した東野に対する、共演者たちの本心からの揺らめき。篠原、杉咲、井上の、芝居を超えた思いが、あの場面に表れたのだとすれば、納得できる。

 東野は「みなさんが『こんなに温かい現場は珍しい』とおっしゃっていて、私もそれを実感しています。本当の家族みたいな感じです。篠原さんはチャーミングな方で、圧巻の芝居をされた後に『なんか、焼き鳥食べたいね』とか普通に言われたりします。待ち時間にも気さくに話しかけてくださったりします。『肌きれいね。何使ってるの?』と聞かれたことがありましたが、私の方が逆に質問したいくらいです。お母さんというより、すてきなお姉さんという感じ。あの笑顔に救われています」と明かす。

 その言葉から、ぬくもりが伝わって来る。温かいドラマは、温かい現場から生まれるのではないか。この作品で、まだまだ名場面に出会えそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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