「勝ちたいんや!」原作者が星野さん追悼「何でわしの方が長生きしてるんや」

[ 2018年1月8日 08:40 ]

星野仙一氏について語った小池一夫氏
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 4日に死去した「闘将」星野仙一氏の半生を漫画にした「勝ちたいんや!劇画・星野仙一物語」の原作者小池一夫氏(81)は7日、スポニチ本紙の取材に「本当に残念」と悲しみに暮れた。漫画は2003年10月から本紙大阪版に100回にわたって連載された。長年親交を深めてきた小池氏は、年下ながら面倒見の良かった星野氏のことを「星野さん」と慕っており「何でわしの方が長生きしてるんや…」と声を振り絞った。

 小池氏はこの日、本紙の取材に「最近は球界と距離を置いていて、星野さんの体調が悪いことも知らなかった」と明かし「まだ若い。何でわしの方が長生きしてるんや…」と落胆した。

 「子連れ狼」「クライングフリーマン」などの漫画原作で知られる小池氏が「勝ちたいんや!」を書いたのは、星野氏が監督として阪神を18年ぶりのリーグ優勝に導いた03年。少年期から現役時代まで「燃える男」の歩みを熱く描写し「巨人の星」の漫画家川崎のぼる氏(76)が作画を担当した。

 本紙大阪版で同年10月15日付から04年3月11日付まで100回にわたって連載されたが、心残りはある。「本当は女性関係とかを含めてもっとくだけた形で人間的な部分を掘り下げてみたかった」と振り返る。最近は執筆活動をセーブしている小池氏だが「チャンスがあるなら星野さんの伝記を書いてみたい」と吐露。「闘将」の足跡を自らのペンで残したい思いをにじませた。

 ON時代からの巨人ファンだったが、90年に知人を介して星野氏と出会うと「ミスター以来だ」とカリスマ性に衝撃を受けた。共通の趣味がゴルフで、星野氏の盟友田淵幸一氏(71)と山本浩二氏(71)を交えて4人でラウンドも回った。田淵氏を「ぶっちゃん」、山本氏を「こうちゃん」と愛称で呼んでいたが、「4人の束ね役で一番の兄貴分だったから」と星野氏だけは11歳年下だったにもかかわらず「星野さん」と呼んで慕っていた。

 00年から大阪芸術大の教授に就任していた縁も重なり、親交のあった星野氏が02年に阪神の監督に就任すると、阪神ファンを公言。星野氏に加え当時の主力だった広澤克実氏(55)や金本知憲監督(49)らと繁華街を出歩き親睦を深めた。こうしたことから「勝ちたいんや!」の原作を務めるのも自然な流れだった。

 小池氏の筆が特に走ったというのが、巨人の長嶋茂雄終身名誉監督(81)と対峙(たいじ)する場面。「絶対に負けたくない。そんな気迫が全身から伝わってきた」。それは「勝ちたいんや!」というタイトルを象徴する姿だった。

 ▽勝ちたいんや!星野仙一物語 星野氏の若き日を劇画で描いた。少年編、高校編、大学編、プロ編で構成。紙面には故高倉健さんらが語る「人間・星野仙一」や「闘将語録」なども掲載された。本紙連載が再構成され、書籍化もされた。

 ◆小池 一夫(こいけ・かずお)1936年(昭11)5月8日生まれ、秋田県出身の81歳。時代小説家の山手樹一郎に師事。小説、漫画原作、作詞など幅広く創作活動を続ける。77年から10年間「劇画村塾」を開講。卒業生にさくまあきら氏、高橋留美子氏、原哲夫氏ら。

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