「石つぶて」佐藤浩市&江口洋介の陰陽バディは“糖衣錠”国家のタブー“苦さ”描くには…

[ 2017年11月5日 08:00 ]

「連続ドラマW 石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜」で本格初共演を果たす佐藤浩市(右)と江口洋介(C)WOWOW
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 俳優の佐藤浩市(56)が6年ぶりに連続ドラマ主演に挑むWOWOW「連続ドラマW 石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜」(日曜後10・00、全8話、初回は無料放送)は5日にスタートする。ノンフィクション作家の清武英利氏が書き下ろした著作を原作に、フジテレビ「振り返れば奴がいる」や映画「沈まぬ太陽」などの若松節朗監督が演出、テレビ朝日「相棒」シリーズなどの戸田山雅司が脚本を務め、2015年9〜10月に放送され、ギャラクシー賞月間賞に輝くなど高く評価された同局「しんがり〜山一證券 最後の聖戦〜」のオールスタッフが再集結。今度は01年に発覚し、政官界を揺るがした「外務省機密費流用事件」を描く。“陰の男”佐藤とバディを組むのは“陽の男”江口洋介(49)。WOWOWの岡野真紀子プロデューサーは名作「北の国から」の脚本家・倉本聰氏から学んだ方法を生かし、国家のタブーに切り込む今作を作り上げた。

 原作は、今年7月に発売された清武氏の「石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの」(講談社)。「石つぶて」とは石ころのこと。「1つ1つは小さな石ころでも、投げ続ければ敵陣に傷跡を残す確かな武器になる」という意味が込められた。外務省の汚職事件を掘り起こした名もなき刑事を描く。

 知能犯・経済犯罪を扱う警視庁捜査二課の情報係係長に斎見晃明(江口)が着任。情報係には捜査四課時代、斎見と合同捜査を共にした偏屈な刑事・木崎睦人(佐藤)がいた。その頃、木崎は情報収集のために足しげく通う元国会議員の事務所で、外務省のノンキャリア職員に贈収賄容疑があることを知る。折しも九州沖縄サミットの開催が決まり、外務省に法外な予算がつく時期だった。木崎は、省庁の中でも最も聖域とされる外務省への疑惑に興奮。しかし、かつて内閣府に対する捜査情報が漏れ、政治的な圧力でつぶされた経験があり、上司でも捜査情報の共有を拒む徹底ぶりだった。木崎が外務省という巨大な敵を標的にしていると直感した斎見は、単独捜査の無謀さを説き、強引に木崎に近づこうとする…。

 江口演じるキャラクターは原作から大幅に設定を変更。ドラマオリジナルと言えるほどになった。佐藤演じる無骨な男の対比として、江口でアテ書き(=演じる俳優を想定して脚本を書く)した。陰と陽。ドラマ上、2人は捜査四課時代に一度ケンカ別れしているが、原作上は捜査四課時代に意気投合と、関係性も変更した。

 この設定について、岡野氏は「糖衣錠」と説明。国家のタブーという“苦い”テーマを、エンターテインメントという“砂糖”で包む。「外務省の汚職事件という話が苦手な人でも、相反する2人が切磋琢磨しながら何かを成し遂げる物語というのは、いつの時代も心惹かれるものがあると思います」。年下の江口が上司というのも、おもしろい。これは12年のドラマWスペシャル「學」で組んだ脚本家・倉本氏から学んだ術だった。

 「倉本先生は『ドラマは糖衣錠だ』と、いつも仰るんです。戦争中、子供だった倉本先生は薬が苦くて飲めず、砂糖に包んだ薬が配られていて『テレビドラマはこうやって作ろうと決めたんだよ。芯は苦くても、甘さで包んでおかないと誰も食べないよ』と。今回も、苦さだけが出てしまうと誰も見てくれないので、どうエンターテインメントとして描くかは丁寧に考えました」。佐藤&江口のバティ設定、キャラクター像が今回の“砂糖”。若松監督や脚本の戸田山氏らと話し合い、生まれた。

 岡野氏は“勝負作”に毎回、江口を起用。WOWOW入社後の初プロデュース作品「なぜ君は絶望と闘えたのか」(10年)、「私という運命について」(14年)、「しんがり〜山一證券 最後の聖戦〜」(15年)に続き、4作目。「浩市さんが背中で悲哀を語る男には、江口さんのような“あんちゃん”の相方が必要だと、お願いしました。『この2人、どうなるの?』と視聴者の皆さんに興味を持っていただけると思います」と今回も重要な役を託した。

 江口も、いつも以上に乗っている。第1話、捜査二課第四知能犯三係主任の刑事・羽佐間克男を演じる菅田俊(62)と言い争いになるが、想定以上の怒鳴り方。岡野氏も「江口さん、役に入っているな、と。主人公の真逆にいるキャラクターを、非常に作り込んでいらっしゃいます。感情はむき出しなんですが、少年のまま大人になったようなチャーミングさもあって、江口さんの新境地になっていると思います」と手応え。佐藤と江口は本格初共演。その化学反応に期待は高まる。

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2017年11月5日のニュース