「客力」アップのための六か条 酒場でモテるには…

[ 2017年1月19日 10:00 ]

カブの葉のふりかけ
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 【笠原然朗の舌先三寸】もともとそんな言葉があるかどうかわからないが、「客力」。語義通り「お客としての力」。酒場限定で、私は常にこの「客力」を意識して酒を飲んでいる。

 作家・山田風太郎の名著に「あと千回の晩飯」がある。氏が72歳のときから朝日新聞夕刊に連載されたもの。余命を想定して晩飯を“書く”という諦念の境地も氏ならではの力業。そこまではいかないまでも、私は今年54歳。肝機能数値も思わしくないし、持病の痛風もある。だから健康でおいしく酒が飲めるのはあと10年。週に5回、飲むとして残り約2500回。そのうち酒場で過ごすのは1500回ぐらいだと思っている。多いようで少ない。すでに“飲み納め”に向けてのカウントダウンは始まっているのだ。

 だから飲むなら、なるべく好きな人と、好きな場所で飲みたい。接待飲みなどもってのほか。するのも嫌なら、されるのも嫌だ。

 そこで酒場での「客力」だ。「客力」があればどうなるか?

 簡単に言うとおおいに得をするのだ。

 勘定を安くしてもらう…などとケチな話ではない。たとえば酒場の店主、従業員、その時間を共有する同行者、ほかの客らと良好な関係を築ける。「心地よい」パラメーターを一気に上げる。ときとして酔って仙境に遊ぶこともできるのだ!?

 残り1500回しか残されていないのなら、得をして毎回、心地よい酒が飲みたいではないか。

 そこで「客力」アップのための六か条を勝手に考えてみた。

 (1)ここで飲ませていただく、食べさせていただくという謙虚な姿勢。

 卑屈になるということではない。ただたまに酒席で見かける「俺は金を払っているのだ」という傲慢な態度の客は店に嫌われる。総じて良い店は、勘定のときに「きょうはおいしくて、楽しかった。ありがとう」という気持ちになるものだ。

 (2)我を捨てる。

 酔ってくると、自分の話ばかりする酔客もいる。話したい気持ちはわかるが、一般ピープルは他人を喜ばせることができるほどの話題を常に持ち合わせていることは少ない。他の客と交流する場合、話すより、聞き役に徹するぐらいの気持ちは必要だ。

 (3)騒がない。

 「飲み放題」の店が増えたせいか、酒を単なる「酔うための手段」としてしか考えられない輩が増えてきた。酒に失礼というものだ。周りにも迷惑である。良い店は、そういう客をさりげなく注意する。「放歌高唱」「放歌高吟」禁止などという張り紙を店でみかけたことがある。酒は静かに飲むべかりけり。

 (4)正しい注文をして、正しくほめる。

 居酒屋には黒板メニューなるものがある。その日のおすすめが白書されているやつだ。ながめていると必ず店が「これこそおすすめ」という品が見つかる。旬のもの、コストパフォーマンスにすぐれたもの、正しく工夫をして調理したものなど。それを注文し、おいしかったら心の底から褒める。ここで店側と心を通じさせることができればば、たとえ一見であっても店は門戸を開いてくれる。

 (5)店と呼吸を合わせる。

 スタッフがきわめて忙しそうにしている最中に、大声で「すみませーん」などと声を張り上げている人を見かける。あれは野暮だ。良い店は、必ず従業員の目配りが行き届いている。だから注文の際、目が合ったら軽く手を上げるぐらいでよい。

 酒が入ると、自分、ないしは自分たちのことしか見えなくなるものだ。

 (6)よく食べ、よく飲む。

 最近では女子会を嫌う店も多い。なぜなら酒も料理も最低限しか注文せず長時間粘るから。店にとって酒と料理をたくさん注文してくれる客は文句なしに「良い客」である。ただし、飲み過ぎ、食べ過ぎて粗相はしないように。店で盛大に噴水を噴き上げている客を何度か見たことがある。

 平たく言えば。飲んでいても常に相手の立場に立って考えるということ。せっかくの酒だからそんなのいいじゃないか!なんだか面倒だ。酒席は無礼講だろ…などと思う方は、チェーンの居酒屋の個室でまずい酒と工場生産の食品を鯨飲馬食していただきたい。

 その日が飲んでむなしくなる“無駄酒”に終わってしまうかどうかは自己責任である。(専門委員)

 ◎カブの葉のふりかけ

 ご飯をおいしく食べられるおかずは、たいてい日本酒にも合うものだ。カブや大根が出回る季節。あの葉を捨ててしまうのはあまりにもったいない。

 (1)カブの葉をこまかく刻む。

 (2)鍋にゴマ油をしき、(1)にじゃこをひとつかみ加えてよく炒める。葉の水分が飛ぶまで。

 (3)しょう油、みりん、日本酒を加え、さらに完全に水分が飛ぶまでさらに炒める。

 (4)火を止めてからゴマ、カツオ節を加えてよく混ぜてできあがり。

 ※大根の葉でも転用可能。

 ◆笠原 然朗(かさはら・ぜんろう)1963年、東京都生まれ。身長1メートル78、体重92キロ。趣味は食べ歩きと料理。

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