紅白42・2% 2・3ポイント減……演出優先で聴きどころ少なく

[ 2015年1月3日 05:30 ]

昨年の紅白で大トリを務めた松田聖子(中央)

 昨年大みそかの第65回NHK紅白歌合戦の平均視聴率は、午後9時からの第2部で42・2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だった。7年連続で40%超えを維持したものの前年から2・3ポイント微減。特別枠で中森明菜(49)やサザンオールスターズが出演するなど話題は豊富だったがいずれも中継出演だった上、ベテラン演歌勢も歌より演出に重点が置かれて聴きどころが少なく、視聴者の心をつかみきれなかった。

 午後7時15分からの第1部は35・1%で、こちらも前年比1・8ポイントの微減。第2部の42・2%は、昨年6月15日にNHKで生中継したサッカーW杯日本―コートジボワール戦の46・6%には届かず、年間2位だった。

 昨年のテーマは「歌おう。おおみそかは全員参加で!」。社会現象となった「妖怪ウォッチ」「アナと雪の女王」両企画コーナーを随所にちりばめ、司会の嵐や吉高由里子(26)、出場歌手らがステージで合唱したり踊る演出を例年以上に盛り込んだ。ジャニーズ事務所からは初出場のV6ら計6組が出演し、これらのメンバーのうち誰かが第1部(1時間40分)は59分30秒、第2部(2時間45分)は1時間1分にわたって出ずっぱりだった。エンターテインメント番組部の三溝敬志部長は「番組のテーマが際立ち、歌の力とともに同じ時間を共有する感動を多くの視聴者の皆さんにお伝えできた」と自信を見せた。

 民放だけでなくBSやCS放送の番組が充実し、ワンセグなど視聴方法も一様ではない現状で42・2%は健闘したと言える。ただ、明菜が12年ぶり、サザンが31年ぶりに出演するなど話題性が十分だった割には視聴率は伸び悩んだ。明菜は米ニューヨークのレコーディングスタジオ、サザンは横浜での年越しライブ会場からWOWOWの映像提供を受けての中継出演で、NHKホールとの“温度差”が映像にも表れていた。

 また、テーマ重視のあまり応援ゲストとの掛け合いなど演出に重点が置かれ、バラエティー色が強くなった。演歌勢ら実力派たちがシンプルに歌を聴かせる部分が少なく、過剰演出にさえ見えた。メリハリもつかず、視聴者の関心を引きつけられなかったようだ。

 ▼松尾羊一氏(放送評論家) 歌がメッセージを持って生活に入っていた時代から変わり、集団でのパフォーマンスやビジュアルなど音楽も多様化している。価値観も多様化し、世代間で好みが違う。アニメ、若者向け、高齢者向けなど、それらさまざまなものを全て盛り込もうとして、エンターテインメント性が強くなったのではないか。むしろ、NHKは、これだけよく詰め込んだなとさえ思う。多様化した時代の中で紅白は、こういう方向でこれ以上でも、これ以下でもなく定着していくのではないか。

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