中村勘三郎 約8か月ぶり舞台復帰…会場総立ちに号泣 

[ 2011年7月24日 06:00 ]

 「突発性難聴」で休養中だった歌舞伎俳優の中村勘三郎(56)が23日、長野県松本市のまつもと市民芸術館で行われた「中村勘三郎特別公演」で「身替座禅」に出演し、本格的に舞台復帰した。演目にフル出演するのは昨年12月3日の石川・金沢公演以来。終演後、ステージで「まだ完璧ではないですが、これからもよろしくお願いします」と号泣した。

 約8カ月ぶりの舞台に涙が止まらなかった。約1400人の観客は「中村屋!」「お帰りなさい!」などと叫びながらスタンディングオベーション。当初は舞台後方でお辞儀をして退場する予定だったが、割れんばかりの拍手に1歩、2歩と舞台前方へ足が動いた。

 「本当にありがとうございます。こんなによくしてくださって…」と、両手で顔を覆って号泣。「本当に完璧ではないんですが…こんな病気なので長くかかるとは思います…。でも、応援してくださってありがとう。これからもよろしくお願いいたします」と声を絞り出し、正座して深々と頭を下げた。

 松本市は08年と昨年、歌舞伎公演を開催したなじみの土地。今回の復帰公演も町を挙げて応援。JR松本駅構内には「おかえりなさい、勘三郎さん」の横断幕。楽屋には、400人以上の市民が寄せ書きした1・5メートル四方の布12枚を届けた。22日に劇場入りした勘三郎は、壁に貼られた激励メッセージを目にして涙を流した。

 突発性難聴は突然、耳鳴りや強いめまいが起きる原因不明の難病。舞台に立つことができず、公演をキャンセルせざるを得ない状況が続いた。

 事務所関係者によると「8カ月近く休んだのは、役者人生で初めて」というだけあり、この日は「舞台に集中させるため取材は遠慮してもらった」という。

 24日も同所で公演。9月には大阪・新歌舞伎座で1カ月の座頭公演が控えている。舞台を見守った好江夫人も「ゴルフで体力強化に努めてます」とホッとした表情だ。駆け付けたファンも「元気でよかった。涙が出た」「舞台は完全。120%」と感激。劇中「うれしや、うれしや」と言いながら花道から引っ込んだ勘三郎。そのせりふ通り、舞台に立てることが楽しくて仕方ない様子だった。

 ≪勘太郎、七之助も出演≫ 公演には長男の勘太郎(29)、次男の七之助(28)も出演。勘太郎は「浦島」、七之助は「藤娘」を舞った。勘太郎は来年2月に六代目中村勘九郎襲名が決定しているだけに、観客から父・勘三郎に負けない拍手を浴びていた。妻で女優の前田愛(27)も義母・好江さんと着物姿でロビーに立ち、ひいき筋にあいさつしていた。

 【復帰までの経過】

 ▽1月9日 松竹が体調不良で2月の新橋演舞場「ペテン・ザ・ペテン」を降板すると発表
 ▽2月1日 松竹が5月まで舞台出演を見合わせると発表
 ▽同7日 降板した3月公演「博多座大歌舞伎」の製作発表会見で長男・勘太郎が「突発性難聴」と病名を明かす
 ▽4月5日 所属事務所が10月25日に鹿児島市で「鹿児島大歌舞伎」に出演すると発表
 ▽同23日 都内で初孫の七緒八(なおや)くんのお宮参り。約4カ月ぶりの公の場で「まだちょっとグラグラするけど大丈夫」
 ▽5月10日 まつもと市民芸術館「中村勘三郎特別公演」での舞台復帰が決定
 ▽6月22日 東京・渋谷のシアターコクーン「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」に飛び入り出演

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2011年7月24日のニュース