NHK中国地方向けドラマ「火の魚」海外へも進出

[ 2010年11月10日 06:00 ]

 NHK広島放送局が中国地方向けに制作したドラマが、フランスの映画祭に招待された。原田芳雄(70)主演の「火の魚」で、スウェーデンでのテレビ放送も決まった。国内では文化庁芸術祭賞大賞を受賞し、全国放送に拡大。映画館での上映計画も進んでおり、「火の魚」が異例の“出世魚”となった。

 招待されたのはパリで12月に開催される「キノタヨ国際映画祭」。4回目の開催でドラマの上映は初めて。話題作品としてクロージングを飾る。
 スウェーデンでは、12月2日にゴールデンタイムの午後8時から国立放送局で放送される。演出を務めた黒崎博ディレクターは「命という普遍的なテーマが共感を呼んだことと、日本の風景や映像美が評価されたようです」と話している。
 原作は作家室生犀星(むろう・さいせい)の同名小説。瀬戸内海の島を舞台に、偏屈な老作家と、がんを患った女性編集者との切ない心の交流を描いた。原田が作家、尾野真千子(29)が編集者を演じた。
 昨年5~6月にかけ、俳優とスタッフ計30人ほどが島の民宿に約2週間合宿しながら収録。小規模な低予算作品だが、同7月に中国地方限定で放送されると、同12月に文化庁芸術祭賞で大賞を受賞。今年3月にNHK総合で全国放送され、同6月にはモナコで開催されたテレビ番組の国際コンクール「モンテカルロ・テレビ祭」で最優秀賞、同9月にもイタリア・トリノで開催された「イタリア賞」で最優秀賞を受けた。
 こうした反響を受け、国内でもテレビ放送の枠を超え、劇場公開の計画まで進んでいる。黒崎氏は「視聴率も考えず、作りたいものを作らせてもらった。夢にも思っていなかった展開で非常に幸せ」と喜んでいる。地方発の小規模な作品の異例の出世は番組制作者に大きな励みとなりそうだ。

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2010年11月10日のニュース