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マーラーが交響曲第1番を書いたのは20歳代終盤にかけて。29歳であった1889年に二部形式の交響詩だった第1稿をブタペストで初演しています。その後、当初は5つあった楽章から「花の章」と呼ばれたゆっくりとした部分を削除するなど何度かの修正やオーケストレーションの大改訂を経て、現在、私たちが聴いている四管編成の大オーケストラを要する4楽章の交響曲として完成させたのが1896年、マーラー35歳の春でした。それから1世紀以上の月日が流れた21世紀の大阪で、29歳のフルシャを通して青年期のマーラーの心の温度が伝わって来たかのように私には感じられました。
フルシャの魅力の1つは、抜群のリズム感にあると思います。指揮をする姿が音楽そのものと一体化しているかのよう。音楽を体感しそれをそのまま素直に全身を使って表現してくれるような指揮に見えるのです。ですから、聴く側にとっては指揮者の解釈を推し量ることもなく、作曲家が曲を作った思いと自然に向き合うことが可能となります。きっとオーケストラのメンバーも同じように、フルシャの指揮ではすんなりと音楽に入っていけるのではないかと想像できます。
もう1つはエレガントさです。オーケストラの音に輝きが与えられたかのよう。これらの印象は昨年末、新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮しベートーヴェンの交響曲第9番を演奏した際に得たものですが、ますますその感を強めることになりました。この日、大阪フィルも各パートのトップは若い演奏者が多かったように見受けられました。それも新鮮な響きを作り上げた1つの要因だと思います。長原コンマスもフルシャと同じ1981年生まれ。ぜひ同じメンバーでマーラー・チクルスに取り組んで欲しいものです。1年に1曲でも2年ごとでも構いません。できればCDだけではなくて、映像も収録してDVDでリリースして欲しいものです。
フルシャは来日するたびに必ず聴きたい指揮者の1人にほかなりません。年内はプリンシパル・ゲスト・コンダクターに就任した東京都交響楽団との共演が12月にあります。私の言っていることが思い込みによる過大評価ではないかどうか、皆さんの目と耳で確かめていただけたら幸いです。
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