市川崑監督「映画は天職」92歳で逝く
「ビルマの竪琴」「犬神家の一族」などで知られる映画監督の市川崑(いちかわ・こん)さんが13日午前1時55分、肺炎のため都内の病院で死去した。92歳。三重県出身。1月下旬に息苦しさを訴えて入院、家族にみとられての最期だった。市川監督は昨夏、三谷幸喜監督(46)の新作で6月公開の映画「ザ・マジックアワー」に映画監督役でゲスト出演。これが最後の仕事となった。葬儀・告別式は近親者で行い、後日お別れの会を開く。喪主は長男建美(たつみ)氏。
市川監督が体調不良を訴えたのは1月24日。関係者に「息苦しい」と訴えて都内の病院へ。肺炎と診断され、そのまま入院した。92歳という高齢のために体力が回復せず、この日未明、長男の建美氏ら親族にみとられ、眠るように息を引き取った。その後、遺体は都内の自宅に無言の帰宅。家族や市川監督の多数の作品を製作、配給した東宝の関係者が付き添った。
午後7時すぎには、市川監督の72、73年のテレビ作品「木枯し紋次郎」などを放送したフジテレビの日枝久会長(70)が弔問に訪れ「お体が悪いとは聞いていませんでした。お世話になりましたと申し上げました」と悲痛な表情で話した。
撮影所やロケ地では、くわえたばこに毛糸の帽子がトレードマーク。たばこは1日に3箱も吸うヘビースモーカー。しかし、新作への意欲から3年前から禁煙。お酒も約20年間、飲んでいなかった。
京都でアニメーターを務めた後、1948年に「花ひらく」で監督デビュー。戦争が引き起こす悲劇を描いた56年の名作「ビルマの竪琴」は、ベネチア国際映画祭でサン・ジョルジョ賞を受賞。米アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされ話題を集めた。
名前を世界にとどろかせたのは65年の「東京オリンピック」。綿密な脚本のもと、競技場が建設される東京の変ぼうぶりや、選手の鼓動や汗を望遠レンズでとらえるなど斬新な手法を駆使。記録映画の枠にとどまらず「記録か芸術か」の議論まで巻き起こした。
昨年8月23日には、三谷監督の「ザ・マジックアワー」に役者として出演。劇中劇の映画監督役で、セリフは「用意スタート」「カット!OK」の2つ。スタッフ役の出演者とアドリブを繰り広げるなど、俳優業も楽しんでいたという。
60年には「おとうと」で毎日映画コンクールの日本映画賞・作品賞を受賞。以後、同コンクールの常連。くしくもこの日は、同コンクール62回目の表彰式が都内のホテルで行われた。「映画は天職」が口ぐせだった巨匠は、映画にゆかりの日を選ぶように天国へと旅立った。
◆市川 崑(いちかわ・こん)1915年(大4)11月20日、三重県伊勢市出身。48年監督デビュー。56年「ビルマの竪琴」など文芸作品の映画化に力を入れ数々のヒット作を輩出。故横溝正史さんの「金田一耕助シリーズ」も人気を博した。カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞(59年)、アジア太平洋映画祭最優秀作品賞(84年)、ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・カメラ賞(00年)など受賞多数。82年に紫綬褒章を受章、94年に文化功労者に選出。
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