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【尚弥はSバンタム級転向すべき?課題は、識者に聞く】杉浦大介氏 パワーパンチの効果保てば無双に

[ 2022年6月8日 05:45 ]

WBA・WBC・IBF世界バンタム級王座統一戦12回戦   ○WBAスーパー&IBF王者・井上尚弥 TKO2回1分24秒 WBC王者ノニト・ドネア● ( 2022年6月7日    さいたまスーパーアリーナ )

杉浦大介米国通信員
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 井上尚弥が次戦でバンタム級(リミット53・5キロ)の4団体王座統一か、1階級上のスーパーバンタム級(同55・3キロ)へ挑戦する意向を明らかにした。(1)井上はすぐにでもスーパーバンタム級に転向すべきか、それともバンタム級がまだ適性階級か(2)世界のスーパーバンタム級の現状と、井上に期待される対戦相手は(3)井上がスーパーバンタム級で戦う課題は何か。米国でボクシング取材に長く携わり、井上もチェックし続けている識者5人の見解を聞いた。

 【杉浦大介氏=ニューヨーク在住スポーツライター、スポニチ本紙通信員】

 (1)トップレベルの実績に乏しいWBO王者ポール・バトラー(英国)に圧勝しても、レジュメが重視されるパウンド・フォー・パウンドなどでの特別な評価は得られないかもしれない。ただ、日本人初の4団体統一王者という肩書は長い目で見てやはり魅力。バトラー戦が比較的早い段階(年内?)に実現するのであれば、やはり世界的にも流行の“undisputed”の称号を取りにいくべきではないか。スーパーバンタム級も統一路線の最中だけに、すぐに階級を上げても好カードが組めるとは限らない。ここで4団体統一という分かりやすい勲章を手に入れておけば、今後の交渉材料にもなる。

 (2)それぞれ2つのタイトルを持ったフルトン(WBC&WBO王者=米国)、アフマダリエフ(WBA&IBF王者=ウズベキスタン)は相応の実力者。PBC(フルトン)、マッチルーム(アフマダリエフ)というプロモーターの違いゆえにマッチメークは容易ではないが、ぜひとも年内にも4団体統一戦を組んで欲しいところ。マッチルームはアフマダリエフの売り出しに積極的には思えず、報酬も比較的安価とあって、PBCへのレンタルはあり得るのではないか。

 ただ、スーパーバンタム級戦線のシミュレーションで楽しみなのは現状ではそこまで。同階級はいわゆる“トップヘビー”であり、この3人以外に将来的な井上との絡みを楽しみにしたくなるような選手は数少ない。フルトンと接戦を演じたフィゲロア(元WBA&WBCスーパーバンタム級王者=米国)はフェザー級転級が濃厚で、特に目立った若手も見当たらない。

 確かなスキルと頑強さ、長距離走が得意というスタミナを備えたフルトンは、井上にとってやっかいな相手になる可能性を秘めている。もちろんモンスターがこれまでどおりに序盤から圧倒しても不思議はないが、その強打が致命傷にならず、体格で勝るフルトンが馬力を生かすような展開になった場合、後半戦はスリリングになるかもしれない。それでも攻防の幅広さで上回る井上の勝利は有望だが、消耗も避けられない戦いになっても不思議はない。

 年内に井上がバトラー、フルトンがアフマダリエフを下せば、両者がともに4団体統一王者として来春以降に激突という夢のシナリオが見えてくる。プロモーター、テレビ局の違いを考慮すればほとんどファンタジーに思えるかもしれないが、実現は不可能ではないはずだ。軽量級史上に残るであろうこんな試合が組めれば、得られるものも大きくなる。

 (3)井上は欠点の見当たらないオールラウンドな選手ではあるが、中でも相手の戦力を一瞬で損わせ、常に警戒を促すその爆発的なパワーが大きなアドバンテージになっているのはまぎれもない事実だ。上の階級でもパワーパンチの効果を現在と同様か、それに近いレベルに保てれば、無双は続く可能性は高い。昇級してもパンチの効き目を保つことは難しいと思うかもしれないが、スーパーミドル級に上げて以降のカネロなど、厳しい体重調整から解放されることがプラスに働くケースは見受けられる。

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