際立った井上の強さ 最高かつ完璧な準備こそが“無敵”生む

[ 2019年6月2日 10:00 ]

<WBSS準決勝井上尚弥・ロドリゲス>2R、ロドリゲスから2度目のダウンを奪う井上尚弥(撮影・島崎忠彦)
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 日本人ボクサーが出場する世界戦が国内外で8試合も行われた5月が終わった。結果は井上尚弥(26=大橋)が勝ったのみで、1勝7敗。残念ながら日本ボクシング界にとって“黄金月間”と呼べる結果にはならなかった。

 それゆえ井上の強さは際立った。英グラスゴーで行われたワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)バンタム級トーナメント準決勝でIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)に圧巻の2回TKO勝ち。WBA王座を防衛するとともに、IBFのベルトを獲得。この試合には米ボクシング専門誌「ザ・リング」認定ベルトもかけられており、井上はノニト・ドネア(フィリピン)とのWBSS決勝を待たずに“階級最強”の称号も手にした。

 さらに「ザ・リング」は井上をパウンド・フォー・パウンド(PFP)4位にランクするなど、海外メディアは階級の枠を超えて井上の強さを論じるようになっている。井上の強さ…どうしても破壊力抜群の攻撃に目を向けてしまうが、ディフェンス力もあり、スタミナや対応力、修正力なども含め総合的に高い次元にある。

 同じように総合力が高く評価されていたロドリゲスとの無敗王者対決。ブックメーカー各社のオッズは「井上の5~7回KO勝利」が最も低く、大方の予想は中盤決着だった。井上自身は1回を終えた時点で「負けはない」と確信したというが、帰国後には「1回のような攻防が何回か続き、中盤でと思っていた」とも明かしている。本人の予想も上回る早いラウンドでのKO劇は、なぜ生まれたのだろうか?

 公開練習で父・真吾トレーナーがロドリゲス陣営から小突かれた“事件”が井上のパワーを増幅させたことも否定はしないが、それが1番ではない。最大の理由は万全の準備にある。井上は常に対戦前の相手を過大評価し、「最強の相手」と位置付ける。自分のパンチや技術が「通用しなかった時にどうするか?」まで考え抜き、そのための準備もする。想定外であるべきはずのことも想定しておけば、強敵との戦いも難しくはなくなる。

 特に今回は対戦が決まってから試合まで7カ月と準備期間も十分にあった。また、井上自身、ロドリゲスを本当に「過去最強」と評価していた。久々の海外での試合ということもあり、多少ナーバスになっている部分もあり、グラスゴーへの出発前には報道陣をシャットアウトしての秘密練習も行った。大橋秀行会長によると、トレーナーにボディーを打たせ“パンチをもらった時の練習”をしていたという。同会長は「そういう姿を見られたくなかったんだろうね」と推察した。

 「無敗は無敵ではない」。前WBO世界フライ級王者・木村翔(30=青木)は、そう言ってWBA世界ライトフライ級王者カルロス・カニサレス(ニカラグア)に挑んだが、結果は完敗。自身も無敗の井上は「無敗には無敗の理由がある」とロドリゲス戦に万全の準備で臨んだ。類い希な才能に恵まれ、それに甘えることなく努力を重ね、最高かつ完璧な準備をする。だからこそ“無敵”なのだ。 (大内 辰祐)

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