日本ハム 本塁打量産なぜ? “名医”のデータ革命でセパ断トツ44発

[ 2026年5月8日 06:00 ]

横尾打撃コーチはデータに基づいた指導に定評がある
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 なぜ、本塁打が急増?日本ハムは開幕から35試合を終えて両リーグ断トツの44本塁打を記録し、179発ペース。背景には今季から1軍を指導する横尾俊建打撃コーチ(32)の存在があった。チーム内で急速に浸透したデータ運用など理由に迫った。(取材・清藤 駿太)

 MLBでは高度な分析技術を駆使し、選手の能力判断や指導に活用するのが当たり前。NPBでも多くの球団が取り入れる中、今季の日本ハムでは“データ革命”が本塁打量産の一助となっていた。

 球団は20年のコロナ禍前後から本格的なデータ運用を進め、アナリストを雇用して若手育成に活用してきた。ただ、1軍ではあまり浸透していなかったため、25年からデータに基づいた指導に定評があった横尾打撃コーチを招へい。今季からは1軍担当として、選手とアナリストの架け橋となり、技術指導に落とし込んだ。

 横尾コーチが「これを使わない手はない」と強調したのが予測システムだ。全試合のデータを集計し、出塁率と長打率を足した打者の総合的な得点貢献度を示す「OPS」の予測値を球団独自で算出。病院のカルテのようなものを各選手に配り、横尾コーチとアナリスト、選手で定期的に“診断”をしている。

 「データはごまかせない。なぜ打てて、なぜ打てないのかはデータを見れば分かる。せっかく予測できるのであれば、予測がいい打者になればいい」

 予測OPSの算出方法は非公表。一般的に長打を生むためにはスイングスピードと打球速度が必要と言われる。例えばスイングスピードは速くても打球速度が遅い選手がいれば、データを基に原因を突き詰める。「ここを良くすればここが悪くなるなど、トレードオフの関係も選手に理解してもらう」と個々にアプローチしてきた。

 現在両リーグ最多8本塁打の万波は、昨季までは不調時に従来の取り組みを疑い、打撃フォームを変更することが少なくなかった。昨秋から横尾コーチとデータ利用に励むと、予測OPSが大幅に上昇。万波は「ホームランがコンスタントに出ているのは、いい取り組みである証拠」と数字の裏付けがあることで、一時の不振で迷うことはなくなった。

 横尾コーチは自らを「打撃オタク」と表現。現役時代から野球専門ジムに通い、理論とデータに基づいた打撃を研究してきた。培ってきた知識があるから選手から信頼され、「今の選手は頭がいいし、勉強をしている。自分も勉強しないとついていけない」とアップデートは欠かさない。

 今後は他球団も対策も予測される。「いたちごっこが始まる。それに対して、選手たちがどういう取り組みとアプローチをしていけるか」。選手を診察し、治療法を見つけ出す――。本塁打量産の影には“名医”がいる。

 ≪選手時代から時代を先取りした打撃理論≫横尾コーチは現役時代に「おにぎり君」の愛称で親しまれ、メジャー打者のようなスイングで綺麗な放物線を描いていた。原点は少年期に映像で観た豪快な原風景。「小さい頃に父親がワールドシリーズのDVDを買ってくれて。バリー・ボンズやマグワイアの打ち方の差を説明されていたのを覚えています」と明かした。

 選手時代から時代を先取りした打撃理論。当時は同僚に共感されないことも多かったという。「理解してくれたのは近ちゃん(現ソフトバンク・近藤)くらいかな?キャンプで“それ教えて”と言ってきた。あとは栗山監督、吉村(浩)本部長」。信念を曲げず、知見を広げてきたから今がある。「僕は現役時代の実績がない分、そっち(知識)で勝ちたい」と強い覚悟を感じた。(日本ハム担当・清藤 駿太)

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