パワー全盛の野球でも大事な「流れ」と「間」 初優勝のベネズエラは球場ごと支配していた

[ 2026年3月19日 08:30 ]

WBC準々決勝<日本・ベネズエラ>5回、ガルシアに2ランを打たれる隅田(撮影・沢田 明徳)
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 野球において「流れ」と「間」の大事さを再認識させられたWBC取材だった。侍ジャパン連覇の夢が潰えたベネズエラ戦は、それが顕著に表れた。

 5―2の4回1死一、二塁。前の打席で申告敬遠された大谷が打席に立つと、期待感が球場を包んだ。多くのベネズエラファンも世界一の選手の打席に応援そっちのけで立ち上がり、スマホでその場面を記録しようとしていた。一本出れば試合が決まる場面。3番手・デヘススが2球で追い込んだところから、少しずつ空気が変わっていった。三振を願うベネズエラファンの大合唱。大谷が三振に倒れると、大歓声で空気が一変した。大谷も「あそこで一本出ていれば違う展開になったのも事実。自分の力不足も含めてそこも勝てる要素の一つだった」と悔やんだ場面だった。

 続く佐藤輝も三振に倒れ無得点。相手左腕は歓喜するベネズエラファンを煽りに煽って一塁ベンチに下がった。直後の5回に登板した隅田は先頭のチョーリオに際どい球を見極められ四球。一死一塁からガルシアに低めを続けるも粘られ「あの1球。失投が全て」という高めに浮いた直球を左中間席へ運ばれた。1点差に迫られる2ラン。日本がリードしながらも、雰囲気はベネズエラがリードしているようだった。

 相手打線はその空気の中で、冷静かつ攻撃的に攻めてきた。6回無死一塁。カウント1―1で4番手・伊藤は一度けん制を入れた。その直後に一塁走者・トーバーがスタートを切り、トーレスは左前打。ランエンドヒットになり無死一、三塁をつくられた。2度目のけん制はアウトにしないとボークになる中で、伊藤がモーションに入ったのは残り3秒。ピッチクロックに慣れているこその攻撃にも見えた。

 打者も残り8秒までに構えなくてはいけない「ピッチクロック」。多くのメジャーリーガーを擁するベネズエラ、米国、ドミニカ共和国は「間」の取り方もさすがだった。打者は球審に声を掛け、ベースの土を払ってもらう、投手のロジンの位置の変更を注文するといった方法で間を取っていた。守備面でもボール交換だけでなく、ここぞの場面でのタイム要求。日本は慣れてない分、普段なら間が取れているところでずるずると飲み込まれていったように感じた。

 応援も凄まじかった。右翼ポール付近の内野席に設置された記者席で戦況を見守ったが、隣の先輩記者との会話は大きな声を出さないと聞こえず、試合後は声が枯れるほどだった。中南米から近いマイアミでベネズエラ、ドミニカ共和国のファンは大盛り上がり。ベネズエラナインは、そのファンを上手く巻き込み、自分たちでより“ホーム”化させていた。ファンとともにつくり出す雰囲気も流れをつくっていた。

 160キロや豪快な本塁打などパワー全盛の現代野球。その最高峰の選手たちが集まった今大会でも、ただ単にプレーするだけでなく、それ以外の要素でいかに自分のペースに持って行くかが大事なのは変わらないと感じた。(記者コラム・小野寺 大)

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