【内田雅也の追球】見て感じ、そして観じる。

[ 2026年2月10日 08:00 ]

若トラたちの視線を浴びながら走塁練習で汗を流す中野
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 見ることは大切である。特にキャンプでは見なければ始まらない。

 コーチや監督は選手をまず見る。仕上がり具合や体の変調、もちろん技術面の力量などを見る。

 選手も周囲の選手を見る。その動きを見て、心のどこかで「勝った・負けた」と感じているはずだ。ならば、どれぐらい違うのかを計りたい。

 <別にモノサシがあるわけじゃありませんが>と前置きし、話の達人と呼ばれた落語家・古今亭志ん生が『びんぼう自慢』(ちくま文庫)で語っている。<「こいつぁ、オレよりまずいな」と思ったら、まず自分と同じくらいの芸ですよ。「オレと同じくれえかな」と思うときは向こうの方がちょいと上で「こいつぁ、オレよりたしかにうめえや」と感心したひにゃ、そりゃもう格段のひらきがあるんですよ>。

 プロならば、この感覚を持ちたい。<実力がなく、周りが見えていない人ほど楽天的になる>と脳科学者・茂木健一郎が『緊張を味方につける脳科学』(河出新書)に書いていた。テストで<点数が低かった人ほど、自分は良くできているはずだ、と自分の能力を高く見積もる傾向がある>。「ダニング=クルーガー効果」と呼ぶそうだ。

 自分を俯瞰(ふかん)して見て(メタ認知)、彼我の差を認められる心を持ちたい。今後の努力に生きてくる。見て感じ、そして観じるのだ。

 阪神キャンプは第2クール最終日だった。ドラフト1位の新人・立石正広(創価大)が初めて1軍扱いの宜野座組で練習を行った。監督・藤川球児は「担当コーチも見たいだろうし(立石も)この景色を見ておくということ」と話した。「プレーの質とかを見て学んだり……経験ですね」。立石自身も1軍級の選手たちを見て感じ、そして観じたはずだ。

 これまで新外国人キャム・ディベイニー(前パイレーツ3A)を同じ遊撃手の小幡竜平や木浪聖也たちが見ていた。何を感じ、観じていたか。

 新外国人ダウリ・モレッタ(元パイレーツ)も宜野座組に合流した。藤川は言った。「こっちのメンバー(宜野座組)でまだモレッタを知らない選手がいます。このへんが1軍なのかな、というのがそろそろチームの中で出てきますから」

 これまで口にしなかった「1軍」という単語が出てきた。藤川も見ている。感じ、観じているのだろう。 =敬称略=(編集委員)

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