【内田雅也の追球】“最早”シート打撃の緊張

[ 2026年2月5日 08:00 ]

浜田(左)の本塁打に藤川監督はマルポーズ!?(撮影・大森 寛明)
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 毎朝配信される阪神キャンプの練習メニューを見て、驚いた。宜野座組、具志川組ともに午後に「シート打撃」とあったからである。

 長年、阪神キャンプを取材してきたが、第1クールに実戦形式のシート打撃を行ったことなどあったろうか。球団史上最も早いかもしれない。

 「ええ、キャンプ前から決まってました」と監督・藤川球児は平然と言った。1月のスタッフ会議で決めていたのだろう。「仕上がりかどうか分からないですけど、選手個々のスピードに合わせてやっているだけですから」。選手たちの自主トレ進行具合を見たうえでの決定だったようだ。

 プロ野球の調整ピッチは年々早くなる。昔ならシート打撃は2月中旬の第3クールだった。10日ほど早い計算になる。
 クライマックスシリーズ(CS)などポストシーズン試合が増え、公式戦開幕が3月下旬(今年は3月27日)と早くなった関係もある。さらに今年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の開催で侍ジャパンメンバーの調整が早い。

 いや、日本代表であろうがなかろうが、選手たちがオフシーズンの自主トレを熱心に行うようになったことが大きいように思っている。昔のように「オフは体を休ませることが重要」という考え方は去り、オフの間もトレーニングを欠かさなくなった。かつて大リーグにも日本にもいたオフに連日、飲み歩く「バンケットリーガー」(宴会選手)はいなくなった。

 さて、そのシート打撃で垣間見えたのは激しい生存競争の緊張感である。出場したのは主力以外のいわゆる若手や新加入の選手たちだった。1軍――という呼称は使っていないが――の宜野座組に多くの若手を登用していた関係もあろう。

 彼らには1軍への生き残りをかけたアピールの場である。具志川組に実績ある選手たちが控えている。必死なのだ。

 それは特に2年目の右腕、今朝丸裕喜の投球に見えた。自慢の速球が上ずり、連続四球の後、現役ドラフトで加入の浜田太貴に本塁打を浴びた。藤川は「大丈夫ですよ」と笑っていた。「物おじしないと言いますけど、やっぱり大人に囲まれるとどうしても頑張るんでね」。まだ子どもで、この経験が糧となる。必ず再起の機会は訪れる。
 これがプロかと厳しさを見た。 =敬称略= (編集委員)

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