【内田雅也の追球】「凡事」の先の「難事」

[ 2025年8月21日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-2中日 ( 2025年8月20日    京セラD )

<神・中(17)>初回、岡林の三盗を阻止した坂本(撮影・岸 良祐)
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 まさか初回の2失点だけで敗れるとは思ってもいなかった。スコアは1―2。1点差試合は20敗目(18勝)で負け越している。気にはなるが、この件はさて置く。

 それよりも1回表の守りを書いておきたい。力みがちで不安な立ち上がりだった先発・伊原陵人を思えば、よく2失点ですんだ。味方の好守が救ったわけで、この堅守こそが首位を独走する阪神の強みにほかならない。

 先頭から3連続長短打で1点を失い、なお無死二、三塁だった。
 細川成也の詰まった当たりは飛球となり、右翼前方ライン寄りに上がった。一塁手、二塁手、右翼手の中間点、ポテン安打の地点だ。アメリカでは俗に「バミューダ・トライアングル」と呼ぶ。フロリダ半島、バミューダ諸島、プエルトリコを結ぶ三角形の海域で、過去に多くの船や飛行機が消息を絶った「魔の海域」として知られる。

 守備陣にとっての「魔の飛球」を中野拓夢が疾走、背走して好捕したのだ。前夜もあった。いや、今季もう幾度も見る中野の背走美技。今や得意技だ。あの三角地点の飛球は中野に任せると申し合わせているのだろうか。これで1死を奪えたのが大きかった。

 続くジェイソン・ボスラーの遊撃左への内野安打で2点目を献上。なお1死一、二塁だった。

 迎えたマイケル・チェイビスはフルカウントとなった。走者スタートのランエンドヒットがある。捕手・坂本誠志郎は承知のうえで球速の遅いチェンジアップを要求。124キロで空振りに取り、三塁送球で俊足の走者・岡林勇希を刺した。三振併殺で切り抜けたのだ。

 伊原は2回から立ち直り、6回2失点のクオリティースタート(QS)で役目を果たした。

 中野の美技も、坂本の配球・好送球も平然と映る。監督・藤川球児が掲げる「凡事徹底」を極めれば「難事」もこなせるようになるのだろう。

 「凡事徹底」の元祖と呼べる、カー用品大手「イエローハット」創業者の鍵山秀三郎は掃除やごみ拾いを極めた。著書の文字通り『凡事徹底』(致知出版社)で<微差、僅差の積み重ねが大差となる>と記している。

 SNS上に前夜の試合後、ベンチ内のペットボトルを集める坂本の動画があった。いつものことらしい。鍵山は<打算があったら続かない>と書いていた。本物の「凡事徹底」である。 =敬称略=
 (編集委員)

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