【内田雅也の追球】「本物」になるために

[ 2025年6月18日 08:00 ]

交流戦   阪神1―3ロッテ ( 2025年6月17日    甲子園 )

<神・ロ>7回、治療を受けた才木の準備投球1球目は高く浮いてバックネット直撃(撮影・後藤 大輝)
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 阪神・才木浩人は投手返しのライナーを受けベンチ裏に下がった。傷めたのは右手である。

 1―0の7回表1死二、三塁、高部瑛斗の打球だった。はじいた後、三塁走者挟殺で走者が入れ替わり、なお2死二、三塁が残った。マウンドに戻った才木の準備投球1球目が浮いてバックネットへ。場内がざわついた。結局7球投げて代打・角中勝也に対した。

 ファウルで粘られた8球目、今度はワンバウンドで投手返しを受けてはじいた。三塁前に転がる内野安打。同点とされた。

 さらに藤原恭大に左前2点打を浴びて3失点で降板となった。

 連続の投手返しは150キロ台速球を返された。打球速度は150キロを超える。あの打球を捕るのは無理だ。グラブに「入った」ということはあろう。運不運がある。“アンラッキー7”だった。

 7回表に浴びた4安打はすべて速球を打たれたものだった。狙われたとか何とか、配球の指摘など無意味だろう。エース格の剛腕が自慢の速球で勝負にいき、打たれた。それだけである。

 打線は1点止まり。力みだろうか、前半5回まで得点圏で7打数1安打。後半は好機すらつくれなかった。これで連敗は7まで伸びた。

 敗戦後、監督・藤川球児は「普通にやることですね」と言った。前監督・岡田彰布(現オーナー付球団顧問)がよく口にした姿勢である。謙虚に丁寧に……普通にやりたい。

 所沢―仙台で6連敗を喫して帰った甲子園。練習中、藤川は珍しく一塁ベンチに座った。普段は二塁手後方の芝生の上に立っているが「あそこは暑いので」と避難してきた。梅雨の合間とは思えぬ夏空が広がり、浜風が吹き、松田聖子の『夏の扉』が流れていた。

 「でもまだ、ましですよね」。確かに涼しい風も吹いていた。「六月を奇麗な風の吹くことよ」(正岡子規)である。

 連敗中の暗さも深刻さもなかった。努めて明るく振る舞っていたのか。「僕は大丈夫です。これからでしょう。これから勝っていけば、それは本物ということです」。こちらが普段思っていることを口にした。同感だ。野球の神様は「負けから学べ」と言っている。試合後も「心を鍛えて、強くなっていけばいい」と先を見すえていた。

 梅雨が明け、本当の夏が来た時が勝負なのだ。今は「本物」になるための日々である。 =敬称略=
 (編集委員)

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