松井秀喜氏が語る長嶋茂雄さんとの「約束」「監督が何を望んでいるか。自分の心の中で聞いてみます」
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肺炎のため3日に89歳で死去した巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんの葬儀・告別式が8日、都内の斎場で営まれた。式には親族、葬儀委員長の巨人・山口寿一オーナー(68)やソフトバンク・王貞治球団会長(85)、巨人OB会長の中畑清氏(71=本紙評論家)らが参列した。喪主は次女の長島三奈さん(57)が務めた。弔辞を読んだ愛弟子の松井秀喜氏(50)が読売巨人軍を通じてコメントを発表した。
祭壇には長嶋さんが大好きなジャイアンツカラーのオレンジの花を基調に敷き詰められ、背番号3のユニホームや、伝説となった天覧試合でのサヨナラ本塁打を打ったバット、国民栄誉賞受賞時に授与したバットなどが飾られた。中央には笑顔の長嶋さんの遺影が置かれ、多くの人を笑顔にした長嶋さんらしい明るい祭壇となった。斎場には現役時代のユニホームやグラブ、バット、新人王トロフィーなどさまざまなゆかりの品が展示された。
弔辞は王氏、中畑氏、松井氏が読み、秘話とともに感謝を伝えた。V9のチームメートや監督時代の選手など多くの関係者が、ミスターを悼んだ。
松井氏は開口一番「監督、きょうは素振りないですよね?」と確認。「その目を見ていると、“バット持ってこい。今からやるぞ”と言われそうでドキッとします。でも、今はその声を聞きたいです」と長嶋さんに語りかける形で弔辞を読んだ。
「ドラフト会議で私を引き当ててくださり、満面の笑みで親指を突き上げてくれました。タイガースファンだった私は、心の中でちょっとズッコケました」と回想。「しかし、その後、すぐに電話で“松井君、待ってるよ”と言ってくださり、あっという間に私の心は晴れました」と振り返った。
長嶋さんに「4番千日計画」などで手塩にかけて育てられた松井氏。「監督はひとたびユニホームを着てグラウンドに出ると、強烈な光を発し、私と二人で素振りをする時は、バットマン長嶋茂雄になりました。それが私の日常でした」と懐かしんだ。
「監督が引退された年に生まれた私は、監督の現役時代をともに過ごした方々と同じ気持ちになりたくてもなることはできません。その時代を生きていません。ですが逆に、私はその、野球の神様、長嶋茂雄というものを、肌で感じていないからこそ、普段、普通の自分自身で接することができました。それが私にとって、非常に幸運だったと思っております」と語った。
「監督を退任する日、私は最後の素振りだと思って、振っている途中、涙が止まりませんでした。これが最後の素振りになると思ったからです。“何泣いてんだ。タオルで涙ふいて、ほら振るぞ”。そう声をかけてくださいました。それが最後だと思っていましたが、翌日もやりましたね。そして、次の年も次の年もやりました。私は長嶋茂雄から逃げられません。これからもそうです。それが私の幸せです」としみじみと語った。
「監督、私は現役時代に一度だけ監督にお願いしたことを覚えていますか。私はセンターを守っておりましたが、“監督、どうせなら私、サードやらしてくださいよ”とお願いしました。そしたら、“お前はサードじゃないよ。お前はやっぱりセンターだ。俺はお前をジョー・ディマジオにしたいんだ”とおっしゃってくださいました。私は全くピンときておりませんでした。ある日、素振りで監督のご自宅にお邪魔した時、私はそこにジョー・ディマジオのバットとジョー・ディマジオの大きな写真があることに気づきました。見逃しませんでした」とエピソードを披露。「監督は本当にジョー・ディマジオが好きなんだなと思って、また、その選手のようになれと言ってくれたことに、本当にその時、幸せに感じました。それから私は喜んでセンターが大好きになりました」と語った。
「その時、監督は、私がジョー・ディマジオと同じユニホームを着て、同じグラウンドでプレーすることを夢に思っていなかったと思います。もちろん、私も思っていませんでした。私が引退して、監督に挨拶に行った時、“監督がジョー・ディマジオって言ったから、私、ヤンキースに行ったんですよ”って言ったら、この笑顔を見せてくださいました。その時、初めて私は、大好きなジャイアンツを去ることになりましたが、これで良かったんだと思いました」と語った。
「そして、今も遠い離れた場所にいます。日本に帰ってくるたび、監督にご挨拶に行くと、監督の言いたそうなことを、言おうとするのに言わない。でも、その気持ちはいつも受け取っておりました。これからも監督が、なぜ私だったのか、なぜ私にたくさんのことを授けてくださったのか。その意味を、その答えを、自分自身が心の中で、監督に問い続けます」と語り、「今度は、私が監督を逃がしません。ですから、今日は“ありがとうございました”も、“さようなら”も、私は言いません。今後も引き続き、よろしくお願いします。そして、その強烈な光で、ジャイアンツの未来を、日本の野球の未来を照らし続けてください」と天国の長嶋さんに語りかけた。
代表取材に応じた松井氏の一問一答は以下の通り。
――弔問もされて、しばらく時間がたって今日を迎えましたが、どのような心境で。
「言葉にするのは難しいんですけれども、きょうは、やっぱり、監督なんでね、笑顔で送り出したいと。そのことだけを意識しました」
――「監督」と呼び掛けていたのは印象に残りましたが、やはり松井さんにとっては「監督」ですか?
「はい。私とジャイアンツとの縁、またジャイアンツで過ごした日々、すべてが監督と共に歩んできた道でしたので。『監督』以外ないですよね」
――みなさんの言葉にもたくさん監督と松井さんのエピソード、話が出てきましたけれど、その言葉をどのような思いで聞いていましたか?
「そうですね。皆さんとはね、監督がずっといつまで元気でいてほしい、そのためには何がいいかな、っていうことをね、たまに話していましたので。その中でね、色々なエピソードだとかがね、できてきたんだと思います」
――ちょっと笑いも出るような、そういう式になるという話もされていた?
「それはまったく(ない)。多分、皆さんがお考えになって、だと思います。はい」
――お見送りをしたわけですけれど、改めて監督への思いというのはどんなものになりますか。
「私にね、たくさんのことを授けてくださいました。また、たくさんの時間を共有してくださいました。本当に、感謝しかないです。これは紛れもない事実です。ただ自分の心の中では、まだまだね、これからも監督にね、色々問いかけたいな、と。その時に監督に答えてもらわないと、という気持ちがあるので。『ありがとうございます』というよりも、『これからもまた、よろしくお願いします』っていう、私はそういう気持ちでいます」
――監督との約束というお話もありましたけれど、やっぱりこれから「野球界にとって」という思いがある?
「監督が何を望んでいるかっていうね、それも監督に、自分の心の中で聞いてみます。それで答えを出していきたいと思います。先日、『約束』という言葉を使いましたけれど、自分の中でも、うん、何か、これからの自分自身とこれからの監督との対話で、監督が導いてくれるんじゃないかなと思っています」
――最後、ご家族やOBの方々とお見送りができたことについて。
「監督がね、きょう落ち着かなかったんじゃないかなと思いますけどね。一緒にプレーした選手の方々、監督として指導した方々、たくさんいたので。みんながみんなの、それぞれの『長嶋茂雄』っていうのがあったと思うんですけど、それに監督は一人一人に答えていたんじゃないですか? 忙しかったんじゃないですかね」
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