包囲網かいくぐった“裏ルート”には「ご褒美」 サウナ、車中で独占取材「何でも聞いてください」

[ 2025年6月8日 05:25 ]

歴代担当記者回想 長嶋さんを追いかけて5

専属運転手の運転で移動していた長嶋監督。95年の年末は熱海までの車中で独占取材を許してくれた
Photo By スポニチ

 長嶋茂雄さんを担当した95年、驚いたのは国民的スターとしてのスケールの大きさだった。いつでもどこでも超VIP。航空機の席は決まって最前列の1Aだ。定刻を過ぎてイラ立つ乗客も長嶋監督が乗り込んでくると、機内はパッと明るくなり拍手に包まれる。

 その長嶋監督に2度ほど独占インタビューをさせていただいたことがある。1度目は東京・田園調布のサウナ。常連といわれる店で開店の午前10時から張り込んだが空振り。3度目の張り込みの時だっただろうか。開店後1時間経過しても現れず、諦めて体を休めようとサウナに入った。お客さんは一人だけいた。長嶋監督だった。何と開店前の9時半から入っていたのだ。「あれ、今日はどうしたの?」「いや監督を捜してまして」「エヘヘ、せっかくだから何でも聞いてください」。バスタオルですっかり白くなった胸毛を隠しながらの取材は至福の1時間だった。

 2度目は年末。デスクから「正月は長嶋さんのインタビューでいく」とむちゃぶりされた。当時は広報を通しての正規ルートの独占取材はNG。自宅での取材もご法度で「サウナ作戦」も空振り。手詰まりだった。ある日、都内のホテルで長嶋監督の知人家族の結婚式があった。夜には熱海で納会がある。結婚式を終えた礼服姿の長嶋監督をホテルの車寄せで見送った。ふと車内を見ると、着替えがない。1度自宅に帰ると確信し、急いでタクシーで追いかけた。

 田園調布の自宅前では専属運転手が出発準備をしている。だが自宅前の取材はNG。行き先は熱海…。自宅から300メートル離れた東名高速に向かう路上で長嶋監督の車を待つことにした。通り過ぎられたらアウトだが、手を振ると目の前で車が止まった。「あれ、浅古さん、こんなところで何しているの?」「いや、ご自宅では取材できませんのでイチかバチかここで待ってました」「乗って乗って。それで何?正月インタビュー?何でも聞いてください」。熱海までの車中2時間の独占取材を許された。私だけの話ではない。どこのメディアでも包囲網をかいくぐって自分にアプローチしてくる記者を面白がり、忘れられない「ご褒美」をくれる。誰からも愛される大スターとの1年は一生の宝物である。 (95年巨人担当キャップ・浅古 正則)

「長嶋茂雄」特集記事

「大谷翔平」特集記事

野球の2025年6月8日のニュース