強豪ぞろいの西東京から狙う甲子園 昨夏4強明大八王子 椙原監督が重要視する「スイッチの入る瞬間」

[ 2024年5月16日 19:45 ]

初の甲子園出場を目指す明大八王子の椙原監督(撮影・柳内 遼平)
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 21年夏の西東京大会で8強、昨夏は4強と甲子園に迫る勢いの明大八王子野球部。今春の東京都大会では3回戦で春夏合わせて14度の甲子園出場を誇る東海大菅生と2―5の接戦を演じ、夏への期待感を漂わせた。入試時の偏差値は68とされる文武両道校の野球部で指揮を執る椙原貴文監督(41)に現在地を聞いた。(聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

 ――昨夏は西東京大会で4強入りし、初の甲子園を視界に捉えた。春季大会を終えたチームの現状は。

 「夏の大会が迫り、もちろん練習の熱は高まらないといけない。ありがたいことに春季大会で東海大菅生さんと対戦することができ、チームの現状がよく分かったところです。(2―5で敗れ)財産を得た試合になりましたが、やっぱり悔しいですよね」

 ――東海大菅生との違いは。

 「やっぱり徹底する力。低い打球を打つ、簡単にアウトにならないように粘り、球数を投げさせる、守備でプレッシャーをかける…選手も試合を通して1つ1つのプレーの徹底力、精度が違うと学びました。2アウトからあと1つのアウトを取り切れず失点を許したところでも甘さを実感しました」

 ――夏には1年生もベンチ入りを目指してくる中で現在のチームは。

 「1年生は怖いもの知らず。がむしゃらにやって失敗を恐れない。それが1年生がチームに入ってくる上でプラスの部分。大事なことだと思います。夏に向かっていくこの期間はキツい時期ですが、誰が一番“勝負したいんだ”という気持ちを持てるか。間違いなくいい競争ができていると思います」

 ――夏に甲子園に行くためには、実績を持つ強豪を倒さなければならない。高い壁がある。

 「やっぱり練習は質も大事ですが、量もこなさいと分からないことがあります。でもウチのように練習時間が限られている環境では、全部のメニューをこなうことはできない。中途半端になってしまう。だから(1日の中で)1つにこだわって練習することにしていますね」

 ――ノックの時にプレーを止めて選手に「なぜ?」と問うことが何度もあった。狙いは。

 「イエス・ノーではなくて、プレーの意図を言語化させています。時間が限られている中、常に意図を持ってプレーすることが大事。そうすると、やっぱり常に考えていないと、こちらの問いに答えることができない。野球に限らず、これは学校生活でも社会でも同じこと。ノック中の問いにしっかり答えられるようになるのは、考えるクセがつき始める3年生になってからですね。考えてプレーすることができる3年生はやはり最後にチームの中心になってきます。だから学校も野球も社会も“考える”ということにおいて一直線上にあると思っています」

 ――入試時の偏差値は68とされ、入学後も高い水準での学力が求められる。文武両道は厳しい。

 「よく勉強と野球の両立は厳しそうですねと言われますが、勉強をしっかりやる子は野球も上手くなる。リンクしているんですよね。勝つ代は勉強ができる選手が多い。これはウチの傾向としてあります。(昨夏4強入りに貢献した3年生は)最後に伸びました。勉強においても1つ1つを理解して進めていけば必ず成績は上がる。それは野球にも通ずること。(勉強との両立は)この学校が勝つために必要なことです」

 ――多くの生徒が明大に進学する。日頃の勉強も厳しい。

 「大学の推薦に絡むテストが定期的にあります。基準より点数を取らないといけない。だから遠征でもバスの中で単語帳を持ってきて勉強する子がたくさんいますね」

 ――夏の大会に向けての思いは。

 「毎年、毎年、順調にいった代はない。子どもたちもいまは苦しい時期と思いますが、去年の先輩たちもこの時期に順調だったかといえば違う。やっぱり毎年苦しいし、悩む。そして本当の意味で気づいて、考えて行動できるチームになった時、チームがガラッと変わる化学反応が起こる。去年の子たちが変化したのは大会中だったんですよ。大会中にスイッチが入った。そのスイッチを見逃さないように選手たちと歩んでいきたいです」

 ◇椙原 貴文(すぎはら・)1982年8月10日生まれ、神奈川県相模原市出身の41歳。広陵小2年時にリトルサンダースで野球を始める。明大中野八王子中では軟式野球部に所属。明大中野八王子(現明大八王子)では主に投手、外野手として活躍。大学では東京六大学野球連盟に所属する明大でプレー。卒業後に明大中野八王子でコーチを務め、15年秋に監督就任。尊敬する人は前監督で現在は顧問を務める石田高志氏。

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