「高校野球の応援は日本の文化」仲間のために演奏する喜びを味わえるのは高校3年間だけ

[ 2024年5月16日 19:30 ]

 昨夏の千葉大会準々決勝 延長12回タイブレークの激闘の末、拓大紅陵は専大松戸に敗れた
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 【君島圭介のスポーツと人間】スポーツニッポン新聞社のYouTube「とどけ!吹部ダマシイ」の企画で拓大紅陵高校を取材した。 拓大紅陵のオリジナル応援演奏メドレーはこちら

 「勝利のテーマ」「チャンス紅陵」「メイプルパワー」「ポイントゲット」「深紅の誇り」…拓大紅陵吹奏楽部の演奏は高校野球のスタンドを彩ってきた。

 千葉県に限らず、全国の球場で聞いたことがある曲ばかりだが、すべて拓大紅陵オリジナルだ。

 作曲したの吹奏楽部顧問の吹田正人氏。オリジナル曲は1985年発表の「レッツゴー紅陵」までさかのぼる。そして翌年には現在では高校野球応援の定番曲となった「チャンス紅陵」が誕生する。

 1992年夏、拓大紅陵が智弁和歌山、池田、尽誠学園など強豪を撃破。決勝では西日本短大付に0―1で惜敗したが、甲子園に旋風を巻き起こしたことでオリジナル応援曲も全国区になった。

 今年のセンバツでは東海大福岡(福岡)―宇治山田商(三重)の両校応援団が「チャンス紅陵」を採用。一塁側、三塁側で両方演奏された。

 吹田氏は「高校野球の応援は日本の文化ですよね。こんなに多くの学校が(応援に)力を入れているのだからいい文化だと思う」とそんな風景を微笑ましく見守る。

 夏の高校野球シーズンが始まると炎天下の過酷な環境下での演奏や吹奏楽部のスケジュールを無視した動員など批判の声も出る。

 昨夏、拓大紅陵は千葉県大会準々決勝で王者・専大松戸をあと1歩まで追い詰めた。

 その日、コンクール当日だった吹奏楽部は時間が許す限り、スタンドで応援していた。試合は延長戦に突入。コンクールメンバーは時間切れで会場へと移動した。

 延長12回タイブレークで敗れたニュースを聞いて、メンバーはコンクール会場で涙を流した。

 吹田氏は「コンクールは大学、社会人になっても出れるけど野球応援は高校3年間しかできない。拓大紅陵高校吹奏楽部は野球応援で負けたくない子たちの集まりなんです」と笑った。

 拓大紅陵が甲子園に勇姿を見せたのは2004年が最後。高校野球ファンも20年ぶりに本家の応援を聞きたい頃だ。

 「甲子園で演奏させてあげたいですね」

 吹田氏は唸るように絞り出した。

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