3・18開幕選抜高校野球 静岡・常葉大菊川 石岡諒哉監督 愚直に貫く堅実野球

[ 2023年1月31日 13:57 ]

ナインに事細かにプレーについて説明を行う石岡監督
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 【第95回選抜高校野球3・18開幕】33歳の若き青年監督が就任3年目でついに聖地への扉をこじ開けた。静岡・常葉大菊川の石岡諒哉監督が日頃から強調する「当たり前のことを馬鹿になってちゃんとやる」という“ABC野球”が見事開花。16年前に日本一を体感した当時のようなノーバントによるフルスイング野球ではない。堅実かつ豪快さを兼ね備えた高校生らしいチーム。全ては表舞台に立てなかった社会人野球での7年間が土台になっていた。

 新日本石油ENEOS(現ENEOS)時代に都市対抗制覇はあっても、試合には出ていない。4年間はほぼブルペン捕手。出場を求めて東海REXに移籍しても、イップスや右肘の故障で代打やDHがほとんどだった。「現役7年間は辛い思いしかない」と振り返りつつ「選手としては野球が嫌いになった時期もありましたが、そこでやれたのは指導者になった今となっては大きな財産です」と胸を張った。

 「日本一」と「プロ注目捕手」の肩書きを引っ提げ、挑んだ社会人の世界で夢を抱いたものだ。しかし、理想と現実は違った。試合に出られない日々。練習が嫌で逃げ出したくなる日もあった。それでもグラウンドに立った。移籍が決まっていたENEOSでの最終試合に大久保秀昭監督(53)が1打席チャンスをくれた。中前打。「ちゃんと練習してきた成果が出た」と喜びをかみしめた記憶がある。そしてREXでの最終戦でも3安打締め。「腐らずやれば良いことはある。人生が変わりました」と指導者になった今、大きな支えとなっている。

 “天国と地獄”を味わってきた経験が生きているからこそ、ナインには「ちょっと試合に出られないからといって沈んでいるのは甘い。本当に野球の“楽しいとは何なのか”を伝えていきたいです」と語気を強めた。展開する野球はいたってシンプルかつ堅実。ノーバントのフルスイングで一世を風靡した高校時代とは違い「一発勝負。必死になってアウトを取って1点取る。アマチュアらしくやるだけです」と派手さはいらない。就任から2年間は勝てず全盛期を知るファンから批判も出たが、自分の信念を曲げなかった。

 「あれは森下先生(選抜V時の恩師)だからできた野球。育ってきた環境もカテゴリーも違う。僕は偽物になりたくない。同じでは絶対に追いつけない」

 石岡野球の神髄を聖地で見せつけ、師超えの序章が幕を開ける。
 (小澤 秀人)

◇石岡 諒哉(いしおか・りょうや)1989年(平元)5月3日生まれ、浜松市出身の33歳。有玉小1年から浜松ジャガーズで野球を始める。積志中―常葉菊川―新日本石油ENEOS―東海REX。高校では2年秋から正捕手となり、3年春の甲子園で優勝、夏が4強。日本高校選抜にも選出。高校通算15本塁打。卒業後は社会人の道に進み4年プレーした新日本石油で都市対抗日本一。1年間の浜松開誠館副部長を経て、17年から常葉大菊川に事務職員として勤務。3年間の副部長を歴任し20年4月から監督。1メートル75、84キロ。右打ち。家族は妻と1男。血液型O。
 

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