市船橋、サヨナラ勝ちで25年ぶり夏勝利 31年ぶり押し出し死球で決着 森本ツインズが5点差逆転呼んだ

[ 2022年8月9日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権第3日・1回戦   市船橋6ー5興南 ( 2022年8月8日    甲子園 )

<市船橋・興南>9回2死、興南・生盛を見逃し三振に仕留め、雄叫びをあげる市船橋・森本星(撮影・坂田 高浩)
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 1回戦4試合が行われた。市船橋(千葉)は5点差を逆転し、興南(沖縄)に6―5でサヨナラ勝ち。8強入りした97年以来25年ぶりの夏の甲子園勝利を挙げた。3回途中から救援登板し、6回2/3を2安打無失点に抑えた森本ツインズの弟・哲星(てっせい=3年)は、8回の同点打など打っても2安打2打点。兄の哲太(てった=同)も5回に左前適時打した。海星(長崎)は、エース宮原明弥(はるや=3年)が8安打、9奪三振で今大会初の完封勝利を挙げた。

 兄弟げんかは日常茶飯事だ。森本ツインズは保育園から中学まで同じクラス。「どっちが学校から早く家にたどり着けるか」「どっちが先にお風呂に入るか」。母・寿道子さん(54)もあきれる、負けず嫌いの争いは、聖地でも同じだった。

 ベンチスタートだった弟の哲星はプロ注目の最速143キロ左腕。「選手が緊張している印象があった。自分が上がったらとにかく楽しませようと思った」と0―3の3回1死一、三塁でマウンドに上がった。直後に2点を失ったが「自分が守備からリズムをつくって打撃につなげる」と、4回以降は強気の投球でゼロを並べた。

 4―5の8回2死一、二塁。哲星は、初めて甲子園で響く「市船ソウル」の演奏に乗り左翼線二塁打。一時は0―5からの同点打に「思い切りスイングしてその結果、タイムリーを打つことができてよかった」とガッツポーズを繰り返した。

 弟の活躍を引き出したのは兄・哲太だ。弟が1死三塁のピンチを無失点で切り抜けた直後の、2―5の5回1死二塁から左前適時打。「追いかける状態だったのでうれしかった」と笑った兄に「哲太がタイムリーを打ってくれたので感謝の気持ちがあります」と言った哲星だが、負けず嫌いに火が付いた。1安打1打点の兄を上回る2安打2打点、6回2/3を2安打無失点の好投。「甲子園という場所で思いっきりプレーをして楽しめたのが結果につながった」と胸を張った。

 9回無死一、二塁から兄が投犠打を決め、その後満塁。代打・黒川裕梧(3年)が背中に死球を受け、夏の甲子園では31年ぶりの押し出し死球でのサヨナラ勝利となった。海上雄大監督は「2人が活躍してくれれば盛り上がる。相乗効果があるのかなと思います」と称えた。

 三塁側アルプス席の母は笑っていた。「負けちゃいられないと思って(哲星の)スイッチが入ったと思います。野球は1人でするわけじゃないから2人で100点」。千葉県勢の夏の甲子園勝利もあと1勝で100になる。(柳内 遼平)

 ▼市船橋・黒川裕梧(3年、9回のサヨナラ死球に)痛みは感じなくて、とにかく勝てたのでうれしかった。

 《松商学園・上田以来》市船橋が押し出し死球で9回にサヨナラ勝ち。押し出し死球でのサヨナラ勝ちは今年の選抜の木更津総合戦で金光大阪が延長13回に記録。夏は78年の仙台育英が高松商戦の延長17回に記録し、91年に松商学園・上田佳範が延長16回1死満塁で四日市工・井手元健一朗から受けて以来31年ぶりとなった。

 ▽市船ソウル 市船橋に受け継がれる応援曲のタイトル。在学中に作曲した同校OBの浅野大義さんは17年にがんのため20歳で亡くなり、浅野さんと市船橋吹奏楽部の絆を描いた映画「20歳のソウル」が今年、上映された。浅野さん役を演じたのは神尾楓珠でトロンボーン、ピアノの演奏もこなし、恩師だった高橋健一先生役は佐藤浩市。原作は中井由梨子さんによって18年に書籍化された。

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