フルスイング貫いた花巻東・麟太郎やはり怪物

[ 2022年3月24日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第5日第1試合・1回戦   花巻東4-5市和歌山 ( 2022年3月23日    甲子園 )

<市和歌山・花巻東>初回、2球目をフルスイングした花巻東・佐々木(撮影・井垣 忠夫)
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 【秋村誠人の聖地誠論】空振りしても、空振りしても、自分のスイングを貫いていた。4打数無安打1死球で2三振。でも、その結果で「怪物」の称号が薄れるとは思わない。

 花巻東(岩手)の2年生スラッガー・佐々木麟太郎。初めての甲子園はほろ苦く、悔しさだけが残ったのだろう。試合後は涙があふれていた。その姿を見て、思い出したことがある。37年前の85年春。甲子園通算13本塁打を誇る昭和の「怪物」、PL学園(大阪)の清原和博のことだ。

 当時3年生だった清原は準決勝で伊野商(高知)のエース・渡辺智男の前に3三振を喫し、チームも1―3で敗退。春夏5度の甲子園で唯一、決勝に進めなかった。記者はその年の4月に入社したばかり。テレビで見た悔し涙を流す清原の姿が印象に残っている。ただ、この時の清原は当てにいくようなスイングは一度もしなかったと記憶している。

 佐々木も、市和歌山のエース・米田天翼に対して全打席フルスイング。初回の甲子園初打席では、2球目の豪快な空振りにスタンドがどよめいた。その光景もまた「怪物」の証明だろう。空振りしても、差し込まれ、詰まってもバットを振りきる。9回2死一塁の最終打席。厳しく攻められた内角球に、それでも向かっていって死球を受けた。気持ちの強さも伝わってきた。

 清原の涙をテレビで見た4カ月後の夏、記者は初めて甲子園で取材。準々決勝の高知商戦で、甲子園史上最大とも言われる清原の超特大アーチを見た。すぐさま先輩記者に「どこまで飛んだか見てこい」と言われ、走って左翼席上段へ。グラウンドを見下ろして「こんなとこまで飛ばしたのか」と驚いたのを覚えている。あれから37年。間もなく還暦を迎える記者に、佐々木がこの夏、今度は右翼席上段まで走らせてくれるのを期待している。(専門委員)

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2022年3月24日のニュース