高校野球は準々決勝が一番面白いのか 選抜の歴史を彩る「準々決勝の名勝負数え唄」

[ 2021年3月28日 15:30 ]

2004年選抜の準々決勝・東北戦で、サヨナラ本塁打を放った高橋を迎え入れる済美ナイン

 高校野球の世界に「準々決勝が一番面白い」との格言がある。通常大会なら、1、2回戦と勝ち上がり、勢いがついたチームの激突。甲子園に慣れてきたうえ、まだ疲労もそれほど蓄積していない。ベストに近い状態で臨む2校の対戦が、面白くないはずがない。第93回選抜大会は雨天順延。高校野球ファンの「心の隙間」を埋めるため?選抜の主な名勝負を振り返ってみよう。

 21世紀以降、ドラマチックな幕切れで思い出すのは、第76回の済美(愛媛)―東北(宮城)戦だ。東北は絶対エースのダルビッシュ(現パドレス)を温存しながら、9回表まで6―2でリード。勝利はほぼ手中にあった。ただ、済美も諦めない。2点を返し、なおも9回2死一、二塁から高橋が左翼・ダルビッシュの頭をはるかに越えるサヨナラの逆転3ラン。ミラクルを起こし、そのままの勢いで創部3年目の初出場初優勝を勝ち取った。

 済美のように、初優勝のターニングポイントになるのも、準々決勝の特徴だ。第60回大会の宇和島東(愛媛)は初出場で8強に進み、宇部商(山口)と顔を合わせた。2―4と2点ビハインドの9回に猛反撃。1点差に迫った後の1死満塁から明神のサヨナラ適時打が左前に抜けた。宇和島東は準決勝で桐蔭学園(神奈川)、決勝で東邦(愛知)と名門校を連破し、昭和最後の選抜を制した。

 その宇和島東が引き立て役になった準々決勝は、その6年後の第66回大会に訪れた。智弁和歌山相手に9回1死まで4―0。そのまま逃げるかと思われたラストイニングにドラマがやってきた。宇和島東投手陣の制球難もあり、智弁和歌山がこの回一挙5点のビッグイニング。9回裏に一度は追いついたものの、智弁和歌山が延長10回に突き放し、高嶋仁監督(当時)が初めて聖地の空に舞うトーナメントとなった。

 両軍譲らない白熱の延長戦も数多い。白眉は第75回の東洋大姫路(兵庫)―花咲徳栄(埼玉)戦だ。東洋大姫路・アン、花咲徳栄・福本の投げ合いは両者譲らず、延長10、15回に1点ずつ取り合い、試合は延長15回の規定による引き分け再試合へ。翌日の戦いも再び5ー5で延長戦に入り、9回からマウンドへ上がった福本のサヨナラ暴投で決着がつく、非情なラストシーンとなった。

 印象深いラストシーンでいえば、第58回大会に旋風を起こした新湊(富山)が京都西(現京都外大西)と戦った一戦も忘れられない。1ー1で突入した延長14回2死一、三塁から京都西の佐々木が痛恨のボーク。思わぬ形で決勝点が入り、甲子園がどよめいた。

 比較的近年を集めた今回の「名勝負数え唄」。古くは作新学院(栃木)と八幡商(滋賀)が選抜大会唯一の延長18回延長引き分けを演じた第34回、東海大相模(神奈川)が完封負け寸前の9回2死から息を吹き返し、豊見城(沖縄)にサヨナラ勝ちを収めた第47回も、準々決勝の舞台が生んだ「奇跡」だった。水入りの甲子園。一夜明けた29日は、どんなドラマが待っているのか。

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