開いたセ、パ両リーグの野球 差は埋まるのか

[ 2020年12月8日 09:00 ]

4年連続日本一で万歳をする工藤監督(中央右)らソフトバンクナイン(撮影・木村 揚輔)
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 日本シリーズが終了したのが11月25日。まだ2週間足らずだが、契約更改も始まり、FA交渉も佳境となっている。コロナ禍のオフシーズンもスケジュールが例年と違う。2021年のスタートはすぐそこまで迫っている。

 日本シリーズでは巨人が2年連続でソフトバンクに4連敗で敗退。セ、パ両リーグの格差については本紙の紙面はもちろん、様々なメディアが分析、検証を展開した。記者もあるパ・リーグの編成トップに、チーム編成、ドラフト戦略について取材。その人物は「パ・リーグは野手の獲得方法に色が出ている。投手は毎年、それなりの力の選手がいるが、野手は絶対数が少ない。体の芯が強く、バットを振れるスラッガータイプは順位を1つ上げでも獲りにいく文化がある」と言った。

 今秋のドラフトで言えば、パでは西武1位の渡部(桐蔭横浜大)同6位のブランドン(東農大北海道オホーツク)ソフトバンク1位の井上(花咲徳栄)2位の笹川(横浜商)オリックス2位の元(中京)日本ハム6位の今川(JFE東日本)らがそのパワー系。セ・リーグではDeNA2位の牧(中大)阪神1位の佐藤輝(近大)あたりだけだという。

 そのスカウティングの源流は「球界の寝業師」の異名を誇った根本陸夫氏にあるという。ある球団のベテランスカウトは「特にレギュラーを取るような野手を積極的に獲る。そこに勇気と信念があるし“こうやったらこう育つ”というノウハウが、西武やソフトバンクにはある」と言った。根本氏が所属した両球団には、野手獲得と育成に関して現在でも「根本色」を感じるという。

 パ・リーグはDH制との相乗効果によって、大型野手が育ってきた。そして、その打者を抑えるために圧倒的な力を持つ、パワーピッチャーが揃う。その繰り返しによって、投打ともにセを圧倒する力を持つようになったと前出の編成トップ、スカウトともに見解が一致した。

 では、いつからその差が生まれたのか。単純比較。05年から交流戦がスタート。今季はコロナ禍で開催されなかったが、過去15年でセ・リーグが勝ち越したのは09年の1度だけ。セ球団の優勝は12、14年の巨人と18年のヤクルトの3度で、パ球団の優勝は12度だ。同じく05年以降の日本シリーズは、今年まで16年でセ球団の日本一は3度でパが13度。1950年から2004年までのセ=32度、パ=23度から、一気に逆転した。ちなみに今年を基準に日本シリーズを20年区切りでみると<01~20年はセ=5、パ=15><81~00年はセ=10、パ=10><61~80年はセ=14、パ=6>となる。
 目指す野球への意識の違いで、十数年に渡って積み上げられた差は大きい。かわすセと力勝負のパ。制度を同じにするだけでは、その差は簡単には埋まらないのかもしれない。(記者コラム・春川 英樹)

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