仙台育英・田中祥都 1番打者、部員103人をまとめる主将として甲子園で見せる背中

[ 2020年6月23日 09:00 ]

室内練習場でバットを振る仙台育英・田中祥都主将
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 試合開始からわずか1分だった。仙台育英(宮城)の1番打者・田中祥都内野手(3年)は、ノースアジア大明桜(秋田)の右腕・佐々木湧生(ゆう)投手(3年)が投じた4球目のチェンジアップに快音を響かせた。力強く引っ張ったライナー性の打球は右翼フェンスを越え、先頭打者本塁打となった。「他の選手に一球でも多く球筋を見せることが自分の役割」と語る田中は、この打席も1ボール2ストライクまでボールを待った。昨秋の東北大会1回戦で対戦した最速141キロ右腕の決め球を読みきり、完璧な一打でチームを勢いづけた。

 8月にセンバツ出場予定だった高校による「2020年甲子園高校野球交流試合」への出場を控える仙台育英は20日に青森山田、21日にノースアジア大明桜と仙台育英グラウンドで練習試合を行った。主力組の試合はともに仙台育英が勝利を収め、2試合で計12得点を挙げた。特に気を吐いたのは、主将、1番打者としてチームをけん引する田中。青森山田戦では最速150キロ右腕の小牟田(こむた)龍宝投手(3年)から2安打を放つと、翌日のノースアジア大明桜戦でも本塁打を含む2安打。好結果にも「(本塁打の打席は)少し体の開きが早かった。少しのズレが高いレベルでは通用しない」と今後への課題とした。

 出身の兵庫県から仙台育英の門を叩いたが、同学年には後にプロ注目の遊撃手となる入江大樹内野手がいた。「名前の通り、ショート(祥都)だったんですけど、入江がいたのでサードになりました」。小学生時代から慣れ親しんだポジションからコンバートを経験し、昨秋ついに三塁手のレギュラーの座をつかんだ。

 部員103人をまとめる主将として、追い求めている姿がある。「1学年上で主将だった千葉蓮さん(現白鴎大)は部員の一挙手一投足に気を配り、対話でチームの目指すべき方向を一つにまとめていた。自分もその姿勢を継承したい」。昨年、新チームで主将となった田中は、コロナ禍によるチーム活動の休止や寮生の帰省で、一時は部員と合うことすら難しい状況になったが、ウェブ会議システム「Zoom」でコミュニケーションを取り、結束を強めた。

 甲子園での試合について田中は「これからの東北の歴史をつくっていく1、2年生のために積み上げてきた努力の集大成を見せたい」と話す。一選手として夢の舞台に立てる喜びや抱負より先にチームのこれからを見据える言葉が自然と出た。夏が終わり、新チームの主将となった選手も、また「主将・田中祥都」の背中を追うだろう。(記者コラム・柳内 遼平)

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2020年6月23日のニュース