Wミーティングで感じたメジャー流モチベーションUPの秘けつ

[ 2015年12月9日 12:45 ]

メディアの報道も過熱するメジャーリーグのウインターミーティング(AP)

 ウインターミーティング初日の7日(米国時間)、おごそかな雰囲気の中で表彰が発表されていた。カージナルスの広報部長を務めるブライアン・バートウさんが「ロバート・O・フィシュエル賞」を受賞。同賞は毎年、メジャー30球団の広報部門職員の中で最も優秀だった人物に贈られる。

 「ブライアンこそフィシュエル賞にふさわしい人物だ。私は常に彼の仕事ぶりを見て、学んできたんだ」。かつてバートウさんの下で働き、現在はブレーブスの広報部長を務めるブラッド・ハインジェさんは自分のことのように喜んでいた。

 バートウさんは30年前の1985年に、インターンとしてカージナルスで働き始めた。2年後に正社員として採用され、広報部長補佐に。堅実な仕事ぶりが評価され、94年には広報部長を任されるまでになった。オリックスの2軍監督に就任した田口壮さんが在籍時も、現場を切り盛り。06、11年の2度のワールドシリーズ優勝時も陣頭指揮を執っていた。

 日本のファンには大きな契約やトレードがまとまる場として認識されているであろうウインターミーティングだが、それはごく一部にしかすぎない。大リーグ関係者一同が会し、参加人数は3000人以上とも言われるスポーツビジネスの祭典。毎年12月上旬のこの時期に4日間、広大なホテルを会場にして数え切れないイベントが行われている。第1回は1876年の開催と言われ、100年をゆうに超す歴史も誇る。

 フィシュエル賞の表彰式もその一端だ。同賞は元インディアンス職員の名を冠に81年から毎年表彰されている。他にも営業職員による各部門別の勉強会も。就職フェアや、用具メーカーらによる見本市も行われる。ロビーでは履歴書を手に各球団のインターンの求人へ申し込む若者も多く、現地では日本人の学生に声を掛けられることも多い。助っ人を求める日本プロ野球の渉外担当者とも、何度も通路ですれ違う。

 スケールの大きさに圧倒されるが、やはり米国らしいなと感じるのは冒頭に挙げた各種表彰だ。裏方さんや、現場外の職員なども、各部門で多くの表彰が行われている。そういえば、宿泊したホテルでは月間最優秀従業員を表彰し、ロビーに毎月の受賞者を写真付で飾っていた。こうした表彰には一部分では持ち回りの色もあるのかもしれないが、やはり人間、褒められるのはうれしいものだ。

 かつて巨人でもプレーした元ヤンキースのロイ・ホワイトさんから「日本人はプレーする前に失敗した時のことを恐れる。アメリカ人は、成功した時のことを期待する」とうかがったことがある。

 どちらが是か非か、白黒付けがたい。それでも一つ一つの表彰が、個人のモチベーションを上げることは間違いない。(後藤 茂樹)

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2015年12月9日のニュース